人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「リゼット。無理しなくても大丈夫。ゆっくり、ゆっくり、と。長い間、使っていなかったんだから、動かせるだけでも凄いことなんだからね」
「は、はい!」

 ユベールが言うには、見世物小屋で見た私は座りながら、身振り手振りをしていたそうだ。
 だから、腕は自由に動かすことができる。けれど、ずっと座っていたために、足が固まってしまったのではないか、と言うのだ。

 半信半疑ではあったが、実際、手は動かせても足は動かない。認めるしかなかった。

「っ! 足が少し上がった! リゼット、体を前に傾けるんだ」

 ユベールはそう言いながら、両手を掴む手に力を入れて、軽く引っ張る。あくまで私の力で、という優しさだ。

「はぁ、はぁ」
「やったー! リゼット、一歩踏み出せたよ。ほら!」
「ほ、本当だ」

 けれど私は確認する前に倒れてしまう。咄嗟に支えられ、衝撃は無かったけれど、たった一歩でこれでは……いつになったら歩けるようになるんだろう。
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