人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「お疲れ様。リゼットも汗をかくのかな。一応、お風呂の準備でもしておこうか」
「えっ! だ、大丈夫です。汗なんてかいていませんから」
「でも……そうだ! 第一歩を踏み出せた記念に、この間作ったドレスを着てみない?」
「っ! 遠慮……ではなく、新しいドレスを製作してみるのはどうですか? 記念というのなら、そちらの方が相応しいと思うのですが」
「うん! それがいいね!」

 何がいいかな、とユベールは上機嫌で作業台へ向かっていった。私は、というと安堵して息を吐く。

 そう、これが最近の私の悩みであり、目標だった。自分の足で動けるようになること。そうすれば、お風呂も着替えも、ユベールに頼らなくて済む。

 最近では面倒になったのか、魔石を外されずにされるため、恥ずかしくて堪らなかった。ユベールは私を人形だと思っているから気にしていない様子だけど……。

 これじゃ、私の身が持たない……!
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