人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「正確には昨日まであった、かな。だから出店が残っているんだ。あと、飾り付けの方も」
「あっ、それで人がいないんですね」
「うん。昨日の夜は打ち上げをしていたみたいだから、多分、あの飾りとかは明後日くらいまであるんじゃないかな。いつもそんな感じだから」

 あぁ、それで外出を……。

「ありがとうございます」
「ん? 何でお礼?」
「それは……街に誘っていただいたのもありますが、私も眺めることができるので」

 お祭りは終わってしまったけれど、その一端(いったん)でも味わえたのが嬉しかった。

「実はさ。外に連れ出すなら、リゼットを見つけた場所を見せてあげたかったんだ。その見世物小屋はもうないから、余計に」
「ないんですか?」
「あれ? もしかして見たかった?」
「違います。何故ないのか、疑問に思っただけです」
「それは簡単だよ。見世物小屋なのに、見せる物が無くなれば、店を畳むしかないだろう?」

 つまりユベールが私を買い取ったことで、廃業になった、というわけだ。それなのに、ユベールはケロッとしている。罪悪感など微塵も思っていないようだった。

 その証拠にユベールは私を鞄から取り出し、ある場所を指差した。
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