人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「……魔女さん?」
「え?」
「違うとしたら、死神さんかな?」
「もしかして、貴方も死にたいと言うのかしら。折角、見つけたというのに」

 大事な時間を邪魔された腹いせで言っただけなのに。どうして、そんな悲しそうな顔で見るんだ。

「誰かとお間違いではないですか? 確かに今は何もやる気が起きませんが、両親の後を追うほど、落ちぶれてはいません」
「そう、なら良かったわ。私はサビーナ・エルランジュ。貴方のお祖父様にお世話になった者よ」
「お祖父様って、変な遺言を遺した、あのお祖父様?」
「えぇ。確かに貴方からしたら不可解な遺言よね。人形を探してくれ、だなんて。それでも、私には貴方のお祖父様、ヴィクトル・マニフィカと同じくらい大事なことなのよ」
「それなら貴女が探したらどうですか?」

 大事なことなら、自分でやればいい。初対面なのに、どうしてそれを僕に言うんだ。
 まるで探してほしい、と懇願するかのように。

 そもそもお祖父様の遺言なんて、父さんも伯父さんたちも守っていない。何故なら人形を探したからといっても、何のメリットもないからだ。
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