人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 むしろ、探す必要はない、とばかりに乱暴な口調で言っていた。その理由を僕は知らなかったから、あえて聞こうとも思わなかった。
 だから、こう質問をすれば引いてくれると思ったのだ。けれどサビーナさんは、逆に詰め寄って来た。

「私ではダメなのよ。見つけたとしても、リゼットを、人形を目覚めさせることはできないから」
「目覚めさせる?」

 人形は人形だろう?

「リゼットは元々人間なのよ。私が彼女を人形に変えた。ヴィクトル・マニフィカに頼まれて」
「お祖父様にそんな趣味が?」
「違うわ。リゼットを守るためにしたことなのよ」

 そうして僕は、サビーナさんからリゼットが人形になってしまった経緯を聞いた。とても悲しい恋物語のような話を。

「つまり、リゼットは今の僕のように一人ぼっちってことですか?」
「分からないわ。誰かの手にいるのかもしれないし、野ざらしにされているかもしれない。今のリゼットはただの人形でしかないから」
「……それは……僕より悲惨ですね」

 想いが届かなかったお祖父様よりも、尚。
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