人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「だからリゼットを助けてほしいのよ」
「どうして僕が?」
「……貴方がヴィクトル・マニフィカに似ているからよ。リゼットが目を覚ました時、安心すると思うの。全く知らない顔より、馴染のある顔が傍にいた方が」

 だから僕に探してほしいと言うのか。

「でもそれって逆に辛くないですか? 僕はお祖父様じゃないし、リゼットはお祖父様に裏切られたと思っているんですよね?」
「どうかしら。人形にしたことで、記憶に誤差が生じている可能性もあるの」
「つまり、最後の部分がごっそり抜けている可能性もあるというんですか?」
「えぇ。あくまでこの魔法は、罰を与えるものだから。対象者をそこまで気遣って作られたものではないのよ」

 それを教え子に使った、と?

 僕は一瞬、サビーナさんを軽蔑しそうになった。が、そんな人がリゼットを探してほしい、というだろうか。さらにお祖父様に似ているらしい僕に、頼むとは思えなかった。
 どちらかというと、リゼットを気遣っているようにさえ見える。大事な存在だと感じざるを得ないほどに。
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