人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
 気がつくと、部屋の扉の前にサビーナ先生がいた。どういうことなのか、体を起こした途端、私はその異変に気づいた。

 足が、動く!? と思った瞬間、体が宙に浮いたのだ。

「キャッ!」
「リゼット!?」

 浮いたままバランスを崩す私に、ユベールはすぐさま手を伸ばす。しかし、サビーナ先生がそれを静止させた。

「大丈夫。リゼット、意識を私に向けて。ゆっくりと私の方に来て頂戴」
「は、はい!」

 サビーナ先生は両手を広げて、私を誘導させる。まるで魔術の指南を受けていた時のような、優しい口調に、私の意識も自然と引き締まった。

 前に風魔法なら、人形の私くらい浮かせられると思っていたけれど、実際に行うとこんな感じなのかな。サビーナ先生もいるし、少しだけ魔法を使っても大丈夫、だよね。

 胸元の赤い魔石に触れ、魔力を注ぎ込む。すると、浮いたままだった私の体はサビーナ先生の元へ、スーッと移動した。
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