人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「でもそれだと、疑問が残ります。リゼットはどうして、見世物小屋でお祖父様の伝記を喋る人形になったのでしょうか。同じ魔石を取り付けても、目を覚ますどころか、からくり人形のようになっていました」
「ユベール。さっきも言ったように、魔石にも相性があるの。あと魔石を取り付ける人間の意思もね。見世物小屋の店主は、リゼットに伝記を語るように思いを乗せて、魔石を取り付けた。だからリゼットはそれに応えただけ」
「僕が目覚めてほしいと願ったから、リゼットは目を覚ました、ということですか?」
「そうよ。あと、私が渡した魔石は、どれもリゼットと相性がいいものだった、というのもあるけどね」

 サビーナ先生はそう言うと、私の胸元にある赤い魔石に目をやった。

 そうだ。ユベールに魔石を渡して、私を探させて。そのユベールがヴィクトル様の孫だと分かっていて協力したサビーナ先生。
 何故、ご自分で探さなかったのか。何故、こんな月日を有したのか。何故、私は見世物小屋で。何故、何故、と疑問が尽きない。

 しかし私は、一番気になることから尋ねることにした。

「ヴィクトル様の伝記というのも気になる話ですが、それがあるのに、サビーナ先生はどうして、あの頃と変わらない姿をしているんですか?」

 そう、サビーナ先生の正体だ。あの頃も、私より随分と年上だったけれど、計算が合わない。

「貴女は誰ですか?」

 私の問いに、サビーナ先生は困ったように笑みを返した。
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