人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「大丈夫よ。私が着せたから」
「サビーナ先生、ありがとうございます。足も動かせるようになったので、これからは自分で着替えられるし……感謝し切れません!」
「あらあら、ユベールくんをフォローしたつもりが、私に返ってきてしまったわ。ごめんなさいね、ユベールくん」
「……いえ、大丈夫、です」

 どうしよう。思った以上に落ち込ませてしまったわ。
 私は咄嗟に、風魔法でポピーを浮かせた。くるくると舞いながら、私の手元にやってくるオレンジ色のポピー。

「ふふふっ。今の私には一輪でも大きいです。ありがとうございます、ユベール」

 そう言いながら、ユベールにも見せるように頭上に掲げた。すると、私の意図を汲み取り、オレンジ色のポピーを受け取ってくれた。

「「思いやり」か。いいよ、リゼットが気にしていたのは知っているから。でも、着替え辛いのもあるからね。その時は……」
「魔法で……」
「リゼット、さすがにそれは無理だと思うわよ」

 まるで諦めなさい、と言われてしまい、私は(すが)るような目線を向けた。本当は「サビーナ先生……」と言いたかったが、またユベールを落ち込ませたくはなかったのだ。
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