人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「だから、マニフィカ公爵様の申し出を断れなかったの。私もまた、リゼットに重圧をかけた一人として、責任を果たしたかった。いいえ、死んでほしくなかったのよ。可愛がっていた小さな命が消えるのを止めたかった」
「それが何で、人形という答えになったのでしょうか」
「貴女を責務から外すには、姿を(くら)ませる必要があったの。リゼットの魔力量が多いことは国中に知られているから、マニフィカ公爵家から出たと分かれば、どうなると思う?」

 思わずあっ、となった。当時は自分の感情のことで手一杯だったから、分からなかったが……。

「犯罪組織か、反逆を企てる者たちに攫われていた可能性もある、というわけですね」
「っ!」

 頭上から、ユベールが息を呑む声が聞こえた。もしそうなっていたら……。
 ユベールと出会うことすらなく、私はあの時代に命を落としていたことだろう。多分、ヴィクトル様を恨みながら。

「正解よ、リゼット。だから始めは、私が貴女を(かくま)おうとした。けれど貴女はマニフィカ公爵様の手紙を読んでも、考えを改めなかったから、人形にしたの。私が目を離した隙に命を絶たないようにするために」
「だからあの時……」
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