人形にされた伯爵令嬢~婚約破棄された落ちこぼれ魔術師は時を越えて幸せを掴む~
「私のせいでヴィクトル様に悪評が……!」
「相変わらずね、リゼットは。そもそもマニフィカ公爵様のせいでこうなったというのに」
「でも、没落というのは、それが原因なのではありませんか?」
「キッカケはね。ここからはリゼットだけでなく、ユベールにも辛い話になるけれど、大丈夫かしら」

 そうだ。ユベールはヴィクトル様の孫なのだから、当然、聞くのも辛いだろう。
 私は頭上を見上げた。

「僕が生まれた時にはもう没落していたから、気にしていないよ。ただ、父さんたちは違っていたけど」
「でしょうね。ユベールくんの父親は末っ子でも、まだマニフィカ公爵家が力を持っていた時を知っているから」
「お祖父様が英雄になった影響もまた、凄かったと聞いています」
「英雄……」

 確か、私がマニフィカ公爵家に引き取られる原因となった、竜の大移動を止めた、とさっきユベールが言っていた。
 ヴィクトル様は無事に役目を果たされたのだ。私が人形になってしまった後でも。
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