月に恋する一番星【マンガシナリオ】
10、アリス イン ワンダーランド。
〇演劇『不思議の国のアリス』ダイジェスト1

 白うさぎ(泉水)を追いかけるアリス(咲奈)。

咲奈(アリス)「ええっ!?うさぎがお洋服を着ているなんて!待ってー!うさぎさん!」
泉水(白うさぎ)「大変だぁ!遅れてしまう、遅れてしまう~!」

〇ダイジェスト2

 不思議な世界に戸惑うアリス(咲奈)。

咲奈(アリス)「ここは……まあ!」

 小さな扉に驚くアリス(咲奈)。

咲奈(アリス)「なんて小さな扉なの……。どうにかして通れないかしら」

〇ダイジェスト3

 ドードー鳥(大地)と沢山の動物たち(クラスメイト男女)

大地(ドードー鳥)「さあさあ、レースの始まりだ!スタートとゴールは自由だ。いつ止まったって良い。さあ走るんだ!」
咲奈(アリス)「よく分からないけど、走るしかないわ……」

〇ダイジェスト4

 チェシャ猫(悠月)と遭遇するアリス(咲奈)。

咲奈(アリス)「どこかに行きたいのだけど、行き方が分からないの。教えてくれないかしら、猫さん」
悠月(チェシャ猫)「それなら、どこに行ったって同じだ。どこにだって行けるよ」
咲奈(アリス)「私ね、おかしな方へは行きたくないの」
悠月(チェシャ猫)「何を言っているんだ。この世界はみんなどうかしている。もちろんアンタも、私もね」

 客席とアリス(咲奈)に向かって語り掛けるチェシャ猫(悠月)。

〇ダイジェスト5

 おかしなお茶会をする3月うさぎ(花火)と帽子屋(陽向)。そこにアリス(咲奈)がやって来る。

花火(3月うさぎ)「やい、満席だ満席だ!」
咲奈(アリス)「まあ。どう見たって空いているじゃない」
陽向(帽子屋)「あんた、髪を切ったらどうだ?」
咲奈(アリス)「人にとやかく言うなんて、無作法よ!」

 独唱する帽子屋(陽向)

〇ダイジェスト6

 ステージ中央に立つハートの女王(美鈴)

美鈴(ハートの女王)「アリスを捕らえて首を刎ねなさい!!」

 トランプ兵(クラスメイトたち)が追いかける。*コーカスレースの他の動物たちと同一のクラスメイトたち

咲奈(アリス)「なによ!あなたたちなんて、所詮トランプじゃない!」

〇ダイジェスト7

 楽器を演奏する生徒たち。*主要演者たちがカスタネットやタンバリンなどの打楽器、陽向(帽子屋)はトランペット、トランプ兵たち(吹奏楽部員)がそれぞれの楽器
 盛り上がる観客席。

〇劇本編終了

 クラスメイト全員がステージに出る*咲奈中央
 歓声に包まれる体育館。
 笑顔あふれる客席の中、後方の客席で厳しい顔をしている他校の女子生徒3名が悠月を見つめる。

〇劇終了後、教室

 小道具や背景を教室に運び込む生徒たち。

柚「あれ?白うさぎの時計、どこかにない?」

 辺りを見回す生徒たち。*疲れた様子

咲奈「泉水ちゃん今有志発表だったよね?舞台袖にあるかもだから見て来るね」
優海「ほんと?ありがと咲奈」

 「ありがとー」とクラスメイトたち。

〇体育館、舞台袖

 ステージ上では有志の女子たちがダンスを披露している。*美鈴、花火、泉水もいる

咲奈(えーっと、時計……)

 辺りを見渡す咲奈。

大地「あれ?星川、どうしたんだ?」

 白うさぎの時計を持った大地が後ろから話しかける。

咲奈「あ、大地くん。ちょうどその時計を探しに来てて……」
大地「これか。さっき泉水から受け取った所だったんだ」
咲奈「そっか、良かった」

 連れだってステージ袖から体育館の外に繋がる扉へと歩く2人。*咲奈が前を歩く

大地「アリス役、お疲れ様。大成功だったな」
咲奈「大地くんが色々アドバイスしてくれたからだよ。……」

 劇の練習を回想する咲奈。
 咲奈、ドアノブに手を掛けて、止める。

咲奈「ねえ、大地くん」
大地「ん?」
咲奈「もしかしてさ、アリス役やりたかった?」
大地「……え?」

 咲奈は振り返らずに話を続ける。

咲奈「なんとなくね、アリスの演技に対して熱心だった気がして」
大地「バカなこと言うなよ。……男がアリスとかおかしいだろ。恰好からして変だ」
咲奈「変じゃないよ」

〇(回想1)小学校、音楽室

 音楽室のピアノを弾く咲奈

小学生男子A「ブスがピアノなんて生意気なんだよ!」
小学生男子B「似合わねー」

 咲奈を指さして笑う男子複数

(回想2)小学校、教室

 フリルとリボンの付いたワンピースを着ている咲奈

小学生男子A「なんだよその服!」
小学生男子B「ブスがそんな服着るとかおかしいだろ」
小学生男子C「常識で考えてくださーい」
(回想終了)

〇再び、舞台袖

 振り向いて大地を見据える咲奈。

咲奈「おかしくない。人を傷つけなければ、恰好や何をするかはその人の自由だって、私は思うよ」

 ハッとする大地。そのまま俯く。

大地「別に……アリス役がやりたかったわけじゃねえ。ただ、その……そういう感じのやつが好きだっただけで」

 咲奈のアリス衣装を指さす大地。

咲奈「……あ、可愛いものが好きなの?一緒だ!」
大地「そう。だから……。悪かったな、強く言い過ぎたかもしれん」
咲奈「ううん。全部的確な意見だったし、おかげで大成功だったもん」
大地「そうか……。それなら良かった」

 穏やかな表情を見せる大地。
 咲奈が扉を開け、2人に外の光が当たる。

〇文化祭、午後、校舎内

 衣装を着たまま校舎内を歩く咲奈と悠月。模擬店で買ったワッフルを食べている2人。

客A「ねぇねぇ、本当にこの学校にYuzukiがいるの?」
客B「この学校の友達がそう言ってたもん。何組かまでは分かんないけど……」
客C「待って、さっきYuzukiが演劇出たらしいよ。猫役だって」
客B「主役じゃなくて?」
客A「猫って、あれじゃない?」

 悠月の方を指さす客A。客3人が向かって来る。

悠月「やば……」
咲奈「行くよ、悠月」

 悠月の手を取って走り出す咲奈。

〇文化祭ダイジェスト

 2人、隠れながら模擬店のフードを食べる。
 熱心なYuzukiのファンから隠れる2人。
 美鈴、柚、花火、優海らがその彼氏といる所に遭遇する2人。
 泉水たちグループに遭遇する2人。

〇夕方、学校、中庭

 中庭のベンチに腰掛ける2人。

悠月「流石に目立つから、着替えて来る……」
咲奈「……じゃあ私も着替えようかな」
悠月「え?せっかく可愛いのに……」

 惜しむように咲奈を見る悠月。

咲奈「そう?」
悠月「うん。ここで待ってて。教室行ってくるから」

 ベンチに腰掛ける咲奈の肩を軽く叩いて立ち去る悠月。
 手鏡を取り出し、髪型を直す咲奈。
 しばらくして、そこに男3人が近寄ってくる。

男A「ねえ、1人?」
男B「一緒に周らない?」
男C「ここの人?可愛い服だね」

 咲奈が顔をあげると、3人組の男子高校生。
 男3人を見てハッとする咲奈。目からハイライトが消える。

咲奈「……と、友達待ってるので」

 男3人の脇を通り抜ける咲奈。男Aが咲奈に問いかける。

男A「もしかして……星川か?」

咲奈モノ『————!!』

 走り出す咲奈。

〇(回想1)小学校

小学生男子A「ブース!」
小学生男子B「キモッ」
小学生男子C「菌がうつるぞー!」

 咲奈から逃げ回る男子数名。膝をついて蹲り、涙を流す小学生の咲奈。

(回想2)小学校、音楽室

 音楽室のピアノを弾く咲奈
小学生男子A「ブスがピアノなんて生意気なんだよ!」
小学生男子B「似合わねー」

 咲奈を指さして笑う男子複数。

(回想3)小学校、教室

 フリルとリボンの付いたワンピースを着ている咲奈
小学生男子A「なんだよその服!」
小学生男子B「ブスがそんな服着るとかおかしいだろ」
小学生男子C「常識で考えてくださーい」
(回想終了)

*小学生男子A=男A、小学生男子B=男B、小学生男子C=男C

〇校舎裏(行き止まり)、日が落ちて段々暗くなる

 行き止まりに立ち尽くす咲奈。
 追いかけてきたのは男Aのみ。

男A「おい、逃げんなよ!」
咲奈「来ないで!」

 気まずそうな男A。
 怯え、震える咲奈。
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