月に恋する一番星【マンガシナリオ】
13、闇に浮かぶ月。
〇(回想)転校前の女子高、1年前

 放課後、教室で仲良さげに話す悠月と天音。*悠月は現在軸では考えられない程よく笑っている。

悠月モノ『——私には仲のいい親友がいた』

天音「悠月、明日新作飲みに行こ?」
悠月「うん!それ気になってたー」

 笑い合う2人に声がかかる。

女A「天音ー!部活始まるよ!」
天音「わー!待って待って」

 慌てて鞄を持って女3人の方へ行く天音。
 教室の入口で天音を待つ女3人。*不服そうな表情

〇2人の日常ダイジェスト

悠月モノ『私たちは休日も一緒にいた』

 カフェやショッピングに出かける2人。

悠月モノ『私は天音を応援して』

 天音のバレー部の試合の応援に行く悠月。

悠月モノ『天音もまた私を支えてくれた』

 悠月が『LILY』読者モデルに応募する時に傍にいる天音。*緊張する2人

〇(回想)転校前の学校、教室、放課後

悠月モノ『友情はいつしか恋心に変わっていた——』

 二人きりの教室。
 夕陽に照らされる天音を恍惚とした様子で見つめる悠月。

悠月「……好き」

 思わず口をついて出た言葉に驚く悠月。

天音「えっ?」

 聞き返す天音。ゴクリとツバを飲み込み、拳を握りこむ悠月。

悠月「私、天音のことが好きだよ」

悠月モノ『天音の返事は考えさせて、だった』

 教室の外で立ち聞きをする人影。*足元のみ映す

〇(回想)翌日、朝、学校

 悠月が教室に入ると、教室の真ん中で立ち尽くす天音。戸惑いを見せる表情。
 静まる教室。クラスメイトたちが一斉に悠月を見る。

天音「あ……。悠月、私じゃない……」

悠月モノ『2人きりだと思っていたのに、その話はどこからか漏れていた』

悠月「天音……」

 涙をこぼす天音に駆け寄る悠月。それを制止する女A。
 女3人が天音の前に立ちはだかる。

女C「ちょっと待ちなよ」
女B「天音に近づかないでよ、気持ち悪い」

 周りを見渡すと、刺すような視線が悠月に突き刺さる。窺うような視線の中、数人がヒソヒソと話し始める。

クラスメイトA「本当にいるんだね。こういう人」
クラスメイトA「もしかしてさ……藤堂さんがこの学校入ったのってさ」
クラスメイトB「え、それ私も思った」
女A「こわっ」
女B「あんたたちも気を付けな、狙われるよ」

 それを筆頭にザワザワと陰口が渦巻く教室。

〇(回想)数日後、教室、授業中

 教室で一つだけ空く天音の席。机の上には大量のプリント。

悠月モノ『天音は学校に来なくなってしまった』

 悠月の机には落書きをされた複数の教科書。*数学などの咲奈に見せてもらっていた教科
 机の下でスマホを操作する悠月。*リアルタイムで悪口のメッセージが届く。
 天音とのメッセージを見返す。

悠月メッセ「本当にごめん」
天音メッセ「悠月のせいじゃないから」

悠月モノ『天音はそう言ったけれど、全ての発端は私だ』

 天音に告白した時のことを回想する。

悠月モノ『私が、天音を好きになったから——』

〇(回想)その1週間後、学校、教室

 1人席に座る悠月*現在軸に近い無表情
 スマホの画面には『読者モデルオーディション合格』の文字。*喜ぶような表情はない。

女A「誰かのせいで県大会ヤバイんだけどぉ」

 慌ててスマホの画面を隠す悠月。女3人が悠月を取り囲む。

悠月「何……」

 苛立った女Aは悠月の椅子の足を蹴る。

女A「だから!天音じゃなくてお前がいなくなれって言ってんの!」
女C「何であんたが居座って、バレー部キャプテンが学校休まなきゃいけないの。意味わかんないんだけど」
女B「それに、あんたがいると変なの感染っちゃう」

 シッシッと追い払う仕草をする女B。
 それでも無視を貫く悠月。しびれを切らした女Aが悠月の胸倉を掴み、立ち上がらせる。

女A「みんなどう思う?これから修学旅行もあるのに、こんなのがいたら迷惑だよね?天音も学校来られないよねぇ!?」

 遠巻きに見ていた生徒たちに問いかけるように言う女A。気まずそうに俯く生徒たち。

女B「やばいって、触るとうつるよー」

 揶揄うように女Aに言う女B。

女A「やっば」

 慌てて手を離す女A。
 勢いよく椅子に叩きつけられる悠月。女3人を睨む悠月。

女B「な、なによその目!ただの揶揄いぐらいでマジにならないでー?」
女C「ノリわる。場を乱す奴とかいらないから。それに……」

 悠月の耳元に顔を寄せる女C。

女C「あんたのだーい好きな天音の為だよ?」

 目を見開く悠月。

〇(回想)廊下

 他の生徒が歩く流れに逆行して廊下を歩く悠月。*ボロボロになった鞄を持っている

生徒A「ねえ、あの子って……」
生徒B「それ、私も聞いた!」
生徒C「やばいよね」

 悠月の噂が学校中に拡がっている。
 瞳からハイライトが消え、一筋の涙が零れる。
 逃げるように走り出す悠月。*暗い闇の方へ向かうような演出

悠月モノ『私が学校に行かなくなってから暫くして、天音は再び学校に通い始めたらしい』

〇現在軸、公園、夜

 夕方から時間が経って、日が落ちている。
 天音のインスタグラムアカウントを見る悠月。*楽しそうな投稿。修学旅行らしき写真もある。

悠月『だから、私は誰とも仲良くするべきじゃなかった』

 (回想)今の高校で仲良くなろうとする生徒たちに壁を作り、孤立する悠月

悠月モノ『それなのに——』

 (回想)咲奈との楽しい日々、咲奈の笑顔

悠月(あの子が……)

 手を額にのせる悠月。

〇(回想)悠月不登校期間、おしゃれな街並み

 読者モデルの撮影をする悠月とスタッフたち。
 撮影が進行する中、悠月の視線上に大荷物を抱えた老婆が歩いている。それを心配そうに横目で見る悠月。

咲奈「おばあさん、持ちますよ」

 近くのアクセサリーショップから出てきた咲奈が老婆に声を掛ける。その姿を凝視する悠月。

老婆「あら、悪いねぇ。お嬢さん1人じゃ大変じゃないかい?」
美鈴「私たちも持ちます!」

 咲奈の後ろから美鈴、柚、花火、優海が顔を出す。

柚「任せてください!」
花火「どちらまでですか?」
老婆「家は近いんだよ。けど本当に大丈夫かい?」
優海「バイトで鍛えてますので!」

 和やかに歩いていく咲奈たち。
 その姿に感心したように話す出版社の担当者と撮影スタッフ。*担当者:6、7話と同一。

スタッフ「良い子たちだなぁ」
担当者「この通りを抜けた所にある学校の子たちですよ。礼儀正しい子たちが多くて——」
悠月「……」

〇(回想)転校してきた日

 悠月視点。
 教壇に立つ悠月。視線の先には咲奈。*目を輝かせて悠月を見る咲奈

〇(現在軸)公園、夜

悠月モノ『今更、誰が話を漏らしたかを特定するつもりはない。ただ——』

 天音のインスタグラムを閉じる悠月。
 顔に手を当てて項垂れる。

悠月モノ『自分のせいで天音を傷つけた、変わらない事実だけがある』

悠月「ごめんね、天音……」

 呟く悠月。そこに大きな足音が鳴り響く。

咲奈「見つけた!」

 大きな声に顔をあげる悠月。
 公園の入口に肩で息をする咲奈。
 驚く悠月に、どんどん距離を詰める咲奈。

咲奈「逃げないで。話そ?私は大丈夫だから」

 悠月の隣に座る咲奈。真っ直ぐ悠月を見つめる。
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