月に恋する一番星【マンガシナリオ】
3、勇気を出す。
〇回想、昼休み、教室

 派手な格好をした一軍女子たちが悠月の所へやってくる

女子A「ねえねえ、一緒にお昼食べない?」
悠月「1人で食べるから」
女子B「流石に1人は寂しいじゃん。ねっ?」
悠月「別に寂しくない。勝手に決めつけないで」

〇回想、休み時間、教室

 クラスメイトが悠月に話しかける。

男子A「ねえねえ、一緒に写真撮ってよ。インスタにあげたくてさ」
悠月「はぁ?いいねを稼ぐ道具にしないでもらえる?」
(回想終了)

咲奈モノ『——こんな感じで、藤堂さんに話しかける人はいなくなってしまった』

〇教室、授業中

 咲奈と悠月の机がくっつき、咲奈が悠月の教科書を見せている。

〇(回想)授業前

 咲奈の所に担任がやって来る。

担任「星川。藤堂は何個か教科書がまだ足らないから、しばらくの間見せてやってくれ」
咲奈「はい。どの教科?」

 悠月に問いかける咲奈。

悠月「……数学と——」
(回想終了)

〇再び、授業中

 咲奈、教科書を見つめる悠月の横顔をチラッと見る。

咲奈モノ『不愛想……っていう感じではないんだよね……。授業終わりには「見せてくれてありがとう」って言ってくれるし』

 机を離しながら声をかける悠月を思い出す咲奈。

咲奈(それにしても、本当に綺麗な顔……)

 悠月の顔アップ。長い睫毛、白い肌、艶のある黒髪。
 視線に気づいた悠月。目が合う2人。

悠月「な、なに……?」

咲奈「いや……綺麗だなぁと、思って」

 我に返る咲奈。

咲奈(しまった、つい思ったことをそのまま……!)

 クラスメイトたちに対して冷たい反応をする悠月を思い出して身構える咲奈。

咲奈モノ『……あれ?』

 耳を少しだけ赤らめて顔を背ける悠月。

〇教室、昼休み

 悠月に話しかける咲奈。

咲奈「一緒にご飯食べない?」
悠月「1人で食べるから」

 悠月は立ち上がり、弁当を持って教室を出ていく。

美鈴「もう諦めたら?断られるの何回目?」

 友人達が咲奈の周りに集まって来る。

柚「藤堂さんは一人が好きなんじゃない?」
花火「ていうか、誰とも仲良くする気ないでしょ。芸能人だし」
咲奈「そんなんじゃ、ないと思う……」

 友人たちが一斉に咲奈を見る。恐る恐る口を開く咲奈。

咲奈「藤堂さんは……そんな人じゃないと思う。根拠はないけど、嫌な感じはしないっていうか……。それに、芸能人だからっていう目で見られるのは嫌だと思う……わたし的にはね」

 ハッとした顔をする友人たちは顔を見合わせる。

咲奈「そ、それに?なんか藤堂さんってキラキラしてるし……!」

 頭に?を浮かべる友人たち。

優海「まー、勘も大事な時はあるよねぇ~」

 教室の外、咲奈たちの会話を聞いている悠月。
 持っていた弁当袋をぎゅっと握る。

〇教室、放課後

 HRが終わり、生徒たちが教室を出ていく。

美鈴「じゃー私部活行くね~」*チア部
柚「私もー。また明日―」*家庭科部

 花火(ダンス部)、優海(帰宅部、バイトあり)も教室を出ていく。
 咲奈も教室を出ようとするが、ふと振り返ると悠月がまだ席についていることに気づく。

咲奈「藤堂さん、まだ残ってるの?」

 咲奈に気づき、見ていたスマホを置いて振り返る悠月。

悠月「先生との面談、あるから」

咲奈(な、なにを話したら——!)

 素っ気ない態度に言葉を探す咲奈。
 悠月のスマホが震え、スマホがつく。スマホのロック画面には桜井アリサの画像。

咲奈「アリサちゃんっ!?」

 大きな咲奈の声に驚く悠月。

咲奈「ご、ごめっ。いきなり……しかも勝手に見て……」

咲奈(何やってんの私……)

 慌てふためく咲奈。その姿を見て静かに笑う悠月。

悠月「好きなの?桜井アリサ。てか、座ったら?」

 笑った顔に見惚れる咲奈。

悠月「星川さん?」
咲奈「あっ、うん。座る座る!」

 自席に座る咲奈。

悠月「で、しきりに私に話しかけていた理由は何?」

 足を組み、頬杖をつく悠月。*怒っている感じではなく不思議そうな感じ

咲奈「えっ。えっと……」
悠月「何かあるんでしょ?私、言いたいことはハッキリ言ってほしいタイプだから」

咲奈(か、カッコイイ~!)

 目にハートマークを浮かべる咲奈。

咲奈モノ『ここは正直に……!』

 目をギュッと瞑る咲奈。

咲奈「……そのっ、私、キラキラしたくて……!!」

 恐る恐る目を開ける咲奈。悠月は増々不思議そうな顔をしている

咲奈モノ『何言ってんの私―!「キラキラしたい」って……!』

悠月「うん。それで?」

咲奈(ちゃんと聞いてくれるんだ……)

咲奈「それで、藤堂さんを見た瞬間、『綺麗だなぁ』『キラキラしてるなぁ』って思って!えっとその……どうやったら藤堂さんみたいにキラキラできるのか、聞きたくて……メイクとか、髪とか、それ以外でもなんでも……」

咲奈(全部言っちゃったよ……)

 体力ゲージが大幅に下がる咲奈。

悠月「そっか。うん、分かった」

 立ち上がり、スマホを操作する悠月。悠月を見上げる咲奈。

咲奈(え……?)

悠月「今日はもう面談始まっちゃうから。はい」

 スマホを差し出す悠月。画面にはメッセージアプリのQRコード。

咲奈「えっ、いいの……?」

(回想)沢山のクラスメイトが連絡先を交換しようとするも、断り続ける悠月

悠月「いいの。明日、持っているメイク道具全部持ってきて」

 悠月アップ。

咲奈モノ『え、え、え、えーーー!?』

〇咲奈の家、咲奈の部屋
 
 スマホの画面を見つめる咲奈。

咲奈(連絡先ゲットしちゃった……)

 スマホの画面にはメッセージアプリ、悠月のプロフィール。*名前だけのシンプルなプロフィール
 起き上がってドレッサーに移動する。

咲奈(持っているメイク道具って言っても……)

 メイク道具一式をドレッサー広げる。4色パレットのアイシャドウが2つ、アイライン、チーク、アイブロウ、マスカラ、ファンデ、リップ。*全てプチプラ

咲奈『これだけで、どうするの——?』
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