月に恋する一番星【マンガシナリオ】
4、憧れる。
〇教室、朝はやく

 いつもより早い時間に教室に着く咲奈。

咲奈「おはよう、藤堂さん!」
悠月「……遅い。3分の遅刻」

 慌てて席に着く咲奈。

咲奈「ごめーん!バス遅れててさ……」
悠月「そう。それと、『悠月』で良いよ」

 顔を上げ、顔を輝かせる咲奈。

咲奈「う、うん!悠月!私のことも咲奈で!」

〇教室、朝

 咲奈たちの教室に人が続々と集まって来る。廊下から遠巻きに教室内を見る生徒多数。

悠月「顔に自信を持ちたいのなら、まずはアイメイクからね。咲奈のなりたいイメージは?」
咲奈「アリサちゃんみたいな感じ!」
悠月「オッケー。アリサの可愛い系ピンクメイクね。咲奈はパッと見ブルべ夏っぽいから合うと思う」

 クラスメイトや他クラスの生徒たちがヒソヒソと話しながら咲奈と悠月に注目する。

大地「何だ、あれは?」
陽向「さあ?楽しそーじゃん」
泉水「あの2人、いつの間に仲良くなったの?」
莉佳「いいなー星川さん。人気読モから直々にメイクレッスンってさ」

 それに一切構わず説明を続ける悠月

悠月「いい?アイシャドウは一番薄い色を全体に。アリサ風にするなら、2つのパレットの色を混ぜて——」

 メモを取りながら聞く咲奈。

悠月「あとで要点はメッセージ送るから、鏡持って、こっち見て」
咲奈「う、うん」

 咲奈の顔に手を添える悠月。2人の顔は至近距離に。

咲奈(な、なんか照れる……)

 咲奈の顔にメイクをしていく悠月。

悠月「締め色はピンクベースのこの色で、ここを埋める」

 咲奈の目アップ。

悠月「アリサは涙袋がしっかりあるから、2番目に濃い色で。筆があれば良いんだけど……」

 自身のポーチからメイクブラシを取り出す悠月。

悠月「あと、アリサのこだわりはなんといっても睫毛。ビューラーでしっかり上げて、長さを出すタイプのマスカラを使うと良いよ」

咲奈(す、すごい……)
咲奈モノ『メイクって、奥深い——』

〇教室、数分経過後

悠月「よし、完成」

 鏡に映る咲奈。全体的に華やかな印象。

咲奈(すっごい……)

咲奈「え、これが私……?めっちゃ可愛くなってる……!」
悠月「メイクはコンプレックスを隠すことも出来るけど、同時に『自分を魅せる』こともできる。咲奈のなりたいアリサ風に演出したから、より魅力的に見えるんだよ」

 咲奈の前髪を留めていたヘアクリップを外す悠月。自身のポーチから髪ゴムを取り出す。

悠月「それに、咲奈は元々可愛いと思うんだけど」

 咲奈の前髪を掬い、ポンパドールにする。

咲奈(か、「可愛い」って……)
咲奈モノ『なにそれ——!?』

咲奈「可愛い?私が?」

 咲奈の髪を梳かしていく悠月。

悠月「可愛いよ。メイクどうこうじゃなくて。……って、何照れてんの」
咲奈「な、なんでもないよ……」

 心臓をバクバクさせる咲奈。
 咲奈の顔アップ*真っ赤

〇教室、授業中

 悠月に教科書を見せる咲奈。

咲奈(めっちゃ良い匂いするような……)

 悠月のいない方に顔を向ける咲奈。

咲奈(今まで気づかなかったのに、なんで……?)

 悠月、咲奈の肩を軽く叩く。咲奈が見ると、悠月がノートの端を指さす。そこにはメッセージが。

悠月のメッセージ『今日の放課後、空いてる?』

 咲奈、メッセージの隣に書き加える。

咲奈メッセ『空いてるよ~』
悠月メッセ『ほんとに?』
咲奈メッセ『ほんとにほんと。何で?』
悠月メッセ『ベガ・ストリートにコスメ見に行くけど、一緒に来る?』

 咲奈はパッと顔を上げ、顔を輝かせ、コクコクと頷く。

咲奈モノ『いつも友達と遊びの約束をした時より嬉しい——』

〇放課後、ベガ・ストリート、カフェ店内

 窓際の席に向かい合って座る咲奈と悠月。*咲奈は可愛いフラッペ、悠月はアイスティー。

咲奈「今日はありがと~悠月。色々教えてくれて」
悠月「別に……買い物のついでだから」

(回想)
 コスメショップでグリッターやメイクブラシを選ぶ咲奈と悠月。

悠月「その色は合わないと思う」
咲奈「えー!?」

 アクセサリーショップで髪飾りを選ぶ咲奈と悠月

咲奈「この飾り可愛い~♡」
悠月「それ、今期のドラマでアリサやってる髪型に合いそう」
(回想終了)

咲奈「そういえば、悠月は何でアリサちゃんが好きなの?」
悠月「……アリサがモデル一本でやってた時に、友達に誘われてガールズコレクションに見に行って、そこで唯ひとり目を奪われたのがアリサだったから」

(回想)
 にこやかに笑うモデルたちの中で1人、真顔で背筋を伸ばしてランウェイを歩くアリサ。観客席にて、ペンライトを振る悠月の友人と、その隣で立ち尽くす悠月。
(回想終了)

悠月「アリサは私がモデル目指した理由。親との約束で、卒業するまでは読モだけど、その後は事務所に所属したいと思ってる」

咲奈(すごい……もう将来の夢が決まってるんだ)
咲奈モノ『それに比べて私は——』

咲奈「他にキラキラする秘訣ない?悠月みたいな生き方、憧れる」
悠月「生き方……自分軸を持って、自分の意思を曲げないこと……とか」
咲奈「自分軸?」
悠月「世間や他の誰かが決めた“正しい”じゃなくて、自分が良いと思うことに従って決めること。それから、嫌なことは嫌って言う」
咲奈「自分軸かあ……」

 顔に影を落とす咲奈。

悠月「咲奈にもあるでしょ。『可愛いものが好き』って自分軸」

咲奈(確かに好きだけど……)

悠月「何?引っかかるものでもある?」

 膝の上で手をギュッと握る咲奈。

咲奈「好きだけど……私の見た目じゃ釣り合わない気がしてて」

 俯く咲奈の顔に手を近づけ、頬に触れる悠月。

悠月「可愛いよ?」

 顔を赤らめ、悠月の手から顔を離す咲奈。

咲奈「それはっ、悠月がメイクしてくれたからで……」
悠月「……咲奈って、たまに良い表情する時あるでしょ。それはメイク関係なくキラキラ?してると思う」
咲奈「良い表情?え、いつ?」
悠月「今日の授業中、ショッピング誘った時とか……」

 顔を赤らめながら話す悠月。

 (回想)悠月のメッセージ『コスメ見に行くけど一緒に来る?』、顔を輝かせる咲奈。

咲奈「それは、悠月に誘われて嬉しくなったからだよ!」
悠月「そう……」

 照れてアイスティーを飲む悠月。赤くなった頬を押さえて俯く咲奈。

咲奈(さっきもそうだけど、悠月に「可愛い」って言われるとドキドキする……)
咲奈モノ『どうして——?』

〇朝、学校、廊下、2階

 登校したばかりの咲奈。1人で廊下を歩く。
 窓の外から生徒の声。*3年の先輩

先輩「——それでっ!付き合ってください、藤堂さん!」

咲奈(えっ!?)

咲奈が慌てて外を見ると、先輩と悠月が向かい合って立っていた。
思わずその場から立ち去ってしまう咲奈。
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