月に恋する一番星【マンガシナリオ】
5、分からない。
〇教室、昼休み

 友人たちと机を囲んで昼食をとる咲奈。しかし、箸は進んでいない。*教室に悠月の姿はない。

美鈴「咲奈ー?おーい」
柚「目開けて寝てる?」
花火「まさか~」
優海「さーなっ」

 優海に肩を叩かれ、はっとする咲奈。咲奈を不思議そうに見る友人達。

咲奈「な、なに?」
美鈴「いやボーっとしてたからさ、悩み事?」

 心配そうな美鈴。

咲奈(悩み事、と言うには曖昧な気が……)

優海「とりあえず話してみな?無理にとは言わないけどさ」
咲奈「……友達の話なんだけど……」

 箸を置いて話し始める咲奈。

友人一同(咲奈の話だ……)

咲奈「その友達が、仲良い子が告白されてる所を見たらしいんだけど……」
友人一同「うんうん」

 咲奈に注目する友人たち。

咲奈「なんかモヤモヤする……らしくて」

 微妙な間が訪れる。

美鈴「……えっ、それだけ?」
柚「その仲良い子は、告白オッケーしたの?」
咲奈「や、分かんない。見る前に思わず逃げ出しちゃった……らしい」

柚(これは……)
花火(え、やっぱそうだよね?)
優海(いや、早まってはダメ)

 アイコンタクトで会話する友人たち。

優海「その友達は、仲良い子のことどう思ってるの?どういう関係性?」
咲奈「どうって……」

咲奈(友達?でも話せるようになったのは最近だし……)

 回答に詰まる咲奈に美鈴が助け舟を出す。

美鈴「友達にとって、その仲良い子とそれ以外の人で何か違ったりする?」

咲奈(違い……かぁ)

咲奈「話せると、嬉しい。キラキラしてる……って」
優海「じゃあその子は、お友達さんにとって“特別”なんだね。だから気になるんじゃない?」
咲奈「特別?」
柚「そ。親友とか、恋愛的に好きとか」
咲奈「そっかぁ。親友かぁ」

美鈴(あれ?)
柚(そっち?)
花火(これは長くなりそうだなぁ)
優海(気長に、気長に見守ろう……)

 再びアイコンタクトで会話し、項垂れる友人達

咲奈「みんな、どしたの?」
 
 1人キョトンとする咲奈。

〇咲奈・家、咲奈の部屋

 ベッドに寝転がる咲奈。傍にはスマートフォンがあり、悠月と通話中の表示。

咲奈「今日のアリサちゃんもめっちゃ可愛かったよねー!」
悠月「うん。歌いながら花道歩くシーン、流石モデルって感じだった」
咲奈「ねー!あと、同じ事務所の若手俳優にバックハグされて恋を自覚したシーン、っめっちゃキラキラしてた~♡」

 (回想)
若手俳優役「待って」

 腕を掴む若手俳優役。それでも逃げようとするアリサ。

アリサ「何なの、私のこと好きでもないくせに——」

 掴んでいた手を離し、アリサをバックハグする若手俳優役。

若手俳優役「行かないで」

アリサ・心の声「今、なんで『好きでもないくせに』って……!」

 アリサの目から涙が零れる

アリサ・心の声「そっか、私、好きなんだ。この人のことが……」
(回想終了)

悠月「そうだね。恋愛感情が上手く表現されてて圧巻だった」
咲奈「……」

 少し考えて口を開く咲奈

咲奈「そういえば今朝、告白されてたよね」
悠月「うん。……見てたの?」
咲奈「見たっていうか、偶然見ちゃって……」

 軽く深呼吸する咲奈。

咲奈「付き合うの?あの人と」

 応答のないスマートフォン。ドクドクと大きく打つ咲奈の心拍。咲奈の顔に一筋の汗が流れる。

悠月「付き合う訳ないでしょ」

 パッと顔を明るくする咲奈。

咲奈「そうなの?」

咲奈(良かった……)
咲奈モノ『あれ?なんで私……』

悠月「好きでもない人と付き合えない。それに、あの人のことは端から好きになれる気もしなかったし」

咲奈(え?)

咲奈「……悠月は、誰かのこと好きになったことある?」

 再び早まる咲奈の心拍。

悠月「あるよ。……上手くいかなかったけど」
咲奈「そ、うなんだ……」

ズキン、と痛む咲奈の心臓。部屋着の上から心臓を押さえる咲奈。
咲奈モノ『何で?何でこんなに心臓が痛いの……?』

〇教室、朝

咲奈「おはよー」

 教室に入った咲奈に、クラスメイトたちが注目する。

美鈴「え、咲奈めっちゃメイク上手になってない?」
柚「髪も良い感じ~」

 咲奈の席の周りに集まる友人たち
 悠月にメイクしてもらった時以上に明るく、ミディアムヘアの髪は編み込みのヘアアレンジ。悠月と選んだ髪飾りを使用。

咲奈「悠月に教えてもらったコツとか動画見ながらね、土日ずっと頑張ったんだ~」

〇(回想)休日、咲奈・家、咲奈の部屋

 悠月からのメッセージや動画を見てメイクやヘアアレンジの練習をする咲奈。机の上にあるメイク道具が少し増えている。

〇再び、教室

悠月「それを、土日で……?」

 隣の席でスマホを見ていた悠月も、思わず話しかける。かなり驚いた様子。

咲奈「全部悠月のおかげ!ありがと~」

 悠月の手を取る咲奈。悠月は照れ、顔を背ける。

悠月「咲奈が努力したからよ……」

 その様子を微笑ましそうに見る友人たち。

〇教室、放課後

 帰り支度をする咲奈に悠月が話しかける。

悠月「今度、読モの撮影があるんだけど咲奈も来ない?」
咲奈「さ、撮影会!?良いの?」
悠月「うん。友達呼んで良いって言われたから」
咲奈「え、い、行きたい……!」

咲奈(てか、さらっと「友達」って——!)

 喜びを噛み締める咲奈。

咲奈『私の世界が、変わる音がした——』
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