月に恋する一番星【マンガシナリオ】
8、支えたい。
〇学校、教室、朝
咲奈の元へ駆け寄ってくる友人達。
美鈴「ちょっと咲奈、これどうしたの!?」
『LILY』最新号を開いて見せる友人A。
『Yuzukiのカワイイ世界♡』と大きく書かれ、半ページに2人が見つめ合うショット。その下にYuzukiのソロショットが何枚か掲載。2人の写真の下には『“カワイイ”が大好き♡Yuzukiのお友達サナちゃん』の文字。
他のクラスメイトたちもゾロゾロとやって来る。
泉水「いつものYuzukiの雰囲気と違っててびっくりしたー」
美鈴「咲奈も良い顔してるよね~!」
雑誌に載っている自分の顔を静かに見る咲奈。
咲奈モノ『私、こんな顔してたんだ……』
〇(回想)咲奈・家、咲奈の部屋
咲奈のスマホが震える。悠月からメッセージが届く。
悠月メッセ『この前撮った2人の写真、半ページで載せたいみたいなんだけど良い?』
咲奈メッセ『良いよー』
悠月メッセ『発売前に見せてもらえるけど、見る?』
咲奈メッセ『うーん、恥ずかしいからいいや』
悠月メッセ『了解』
〇再び学校、教室
悠月「何?騒々しい……」
登校する悠月。ドアの前で困惑顔。悠月に気づき、一斉に沸く教室内。
泉水「『LILY』見たよ!すごいね、藤堂さん!」
莉佳「実はこういうの好きなの?意外!」
悠月「いや……」
うろたえる咲奈。
咲奈「て、提案したのは私なの。だからその、これは私の好みっていうか……」
泉水「そうなの!?」
美鈴「咲奈プロデューサーじゃん」
莉佳「確かに、星川さん可愛いもの好きだもんね。前から合ってるなって思ってたんだよね!」
花火「分かる~雰囲気が合ってるよね」
咲奈(私に……合ってる……)
咲奈『そう、なんだ』
再び雑誌に載る自分を見つめ、笑顔を見せる咲奈。それを慈しむように見つめる悠月。
〇教室、LHR
黒板に縦書きで『白雪姫、シンデレラ、不思議の国のアリス、赤ずきん』の文字。不思議の国のアリスの下に沢山の正の字。
学級委員B「文化祭でやる演劇は『不思議の国のアリス』に決まりましたー!」
泉水「最近映画やってたし人来そうだよね」
莉佳「ねー配役どうする?特にアリス!」
クラス中がシンとする。手を挙げる人は誰もいない。1人の男子が家をあげる。
男子A「やっぱ藤堂にやってもらいたいよなー。集客的に」
悠月「……主役は遠慮するわ」
男子B「星川は?この前雑誌載ってたし良いんじゃね」
咲奈(え、私……?)
泉水「良いじゃんそれ!咲奈ちゃんいつも可愛いもの持っててピッタリ!」
学級委員B「星川さん、どうですか?」
咲奈「えっ、と……他にアリス役やりたいって人はいないですか?」
静まる教室内。
咲奈「どう思う?悠月」
隣の悠月に声を掛ける咲奈。
悠月「咲奈がやるなら、私は出来る範囲で手を貸すよ」
立ち上がる咲奈。
咲奈「や、やります!可愛いもの、好きなので!」
〇数日後、教室、演劇練習
教室の前方で劇の練習をする演者たち。
*演者は咲奈(アリス)、泉水(白うさぎ)、大地(ドードー鳥)、悠月(チェシャ猫)、花火(3月うさぎ)、陽向(帽子屋)、美鈴(ハートの女王)、他男女数名
教室の後方では大道具、小道具が制作されている。*柚、優海、莉佳は小道具担当
泉水「うーん……アリスのセリフは完璧なんだけど……」
大地「演劇ではない、な」
陽向「棒立ちで活発な女の子感がないよなぁ」
泉水「アンタはまずセリフ覚えなさいよ。でも確かに、セリフを言う時に動きがあった方がそれっぽい、とは思うな」
咲奈(動き……)
咲奈「そ、そうだよね……」
台本にメモを書く咲奈。しかし手がふと止まる。
咲奈モノ『演劇の動きって——?』
1人悩む咲奈。悠月がはっと思い出したように口を開く。
悠月「『バラ色勇者』、『混沌学園』、『Hero Girls 2』『はつ恋マドリード』」
咲奈(あっ)
顔を見合わせる咲奈と悠月。ひらめく咲奈、頷いて笑みを浮かべる悠月。
その様子を不思議そうに見る他演者たち。
〇夜、咲奈・家、咲奈の部屋
咲奈「……よし!」
パソコンにDVDを入れる咲奈。*桜井アリサが出演している舞台映像
台本にメモを書く咲奈、アリサと同じ動きをする咲奈。
悠月とビデオ通話で話しながら練習する咲奈。*アドバイスをしつつ優しく見守る悠月
悠月「いいんじゃない?」
咲奈「そうかな?でもアリサちゃんの舞台で勉強できる日がくるとはなぁ」
悠月「私も、ウォーキングやポージングは全部アリサで勉強したよ」
咲奈「そうなの!?」
咲奈モノ『思いがけない共通点。なんだか嬉しい——』
胸を躍らせる咲奈。
〇数日後、教室、文化祭準備
机を全て後ろに下げた教室。前方に演者、他のクラスメイトは立ち稽古を見ている。できかけの背景や小物、衣装などが生徒たちの机の上や床に置かれている。
咲奈(アリス)「……あれ?私、夢を見ていたの……?」
床に座り、辺りを見渡す(演技)咲奈。
泉水「良いじゃん!めっちゃ本格的な演劇みたい……」
女子A「なんか、本格的じゃない?」
女子B「星川さんすっご!」
沸き立つクラスメイトたち。
大地「確かに良くなったけど、気持ちの表現は曖昧じゃね?」
陽向「うん。伝わってこないっていうか」
泉水「だからアンタはセリフを覚えてから言いなさいよ、そういうことは」
陽向「それは……」
大地「でも本当のことだろ? 気持ちが伝わらなきゃ盛り上がらないだろ観客は」
クラスメイトたちに問いかける大地。
女子A「まあ……」
女子B「それは……ね?」
チラチラと目くばせし合うクラスメイトたち。
大地「一番出番が多い主役が肝心なんだからさ、頑張ってもらわないと」
咲奈「う、うん。頑張るね……」
台本を握りしめて言う咲奈。*台本ボロボロ、付箋たくさん
教室内はどんよりと重い空気、沈黙が広がる。
悠月「ちょっと。ただでさえ負担が偏りがちなのに、さらに圧をかけることないでしょ。まだ時間はあるんだから」
咲奈(悠月……)
教室の重い空気が晴れ、徐々に話し始めるクラスメイトたち。
泉水「そうだよ、星川さん気にし過ぎないで!本番まで1週間もあるんだし!」
柚「衣装と背景完成したら気持ちついてくると思うよ」
男子A「俺らも星川さんのためにも、大道具頑張るかー!な?お前ら!」
賑やかになるクラスメイトたち。それぞれの作業を始める中、ひとり考え込む咲奈。
咲奈モノ『アリスの、気持ち——』
その様子を心配そうに見る悠月と友人たち。
〇放課後、教室
ガヤガヤと賑わう教室。帰りの支度をする生徒たち。
咲奈の周りに集まる友人達。
美鈴「今日さ、映画観に行かない?」
花火「行きたい!見たいやつあったんだー」
柚「白夜ストリートの流星くんが主演のやつ?」
優海「私も行く!咲奈はどうする?」
暗い顔をあげ、作り笑いをする咲奈。
咲奈(とてもそんな気分じゃ……)
咲奈「ご、ごめん。今日はちょっと……」
震える声で言う咲奈。
美鈴「そっかー。じゃあ仕方ないね」
柚「映画今度にしよっか」
花火「ね。一緒に観たいもんね」
咲奈(みんな……)
優海「あ、駅前にできたカフェとかどう?」
美鈴「いいじゃん!」
柚「じゃ、咲奈また明日ー」
咲奈の元を去っていく友人達。咲奈は手を振って見送る。その様子を横目で気にする悠月。
〇静かになった教室
1人台本を読み込む咲奈。台本には『アリス「もう!この世界、一体どうなっているのかしら?」』と書かれている。
咲奈モノ『アリスの気持ち……』
咲奈(動揺、驚き……あとは——?)
そこに悠月がやってくる。
悠月「あまり根を詰めない方が良いよ」
咲奈「悠月、帰ったんじゃ……」
窓の外を指さす悠月。外は雨が降っている。
悠月「雨宿り」
素っ気なく答える悠月にほほ笑む咲奈。
咲奈「……ありがとう」
悠月「それで、どこに悩んでいるの?」
咲奈「アリスの気持ちを理解しようとしてるんだけど……そもそもこのお話自体掴みどころがないから……」
隣の席に座る悠月。自身の鞄から台本を取り出す。*鞄の底に折り畳み傘がある
台本に目を通す悠月。
悠月「私は少しだけど分かる部分があるよ」
咲奈「え?」
悠月「……例えば、ここ」
台本の1箇所を指し示す悠月。
咲奈の元へ駆け寄ってくる友人達。
美鈴「ちょっと咲奈、これどうしたの!?」
『LILY』最新号を開いて見せる友人A。
『Yuzukiのカワイイ世界♡』と大きく書かれ、半ページに2人が見つめ合うショット。その下にYuzukiのソロショットが何枚か掲載。2人の写真の下には『“カワイイ”が大好き♡Yuzukiのお友達サナちゃん』の文字。
他のクラスメイトたちもゾロゾロとやって来る。
泉水「いつものYuzukiの雰囲気と違っててびっくりしたー」
美鈴「咲奈も良い顔してるよね~!」
雑誌に載っている自分の顔を静かに見る咲奈。
咲奈モノ『私、こんな顔してたんだ……』
〇(回想)咲奈・家、咲奈の部屋
咲奈のスマホが震える。悠月からメッセージが届く。
悠月メッセ『この前撮った2人の写真、半ページで載せたいみたいなんだけど良い?』
咲奈メッセ『良いよー』
悠月メッセ『発売前に見せてもらえるけど、見る?』
咲奈メッセ『うーん、恥ずかしいからいいや』
悠月メッセ『了解』
〇再び学校、教室
悠月「何?騒々しい……」
登校する悠月。ドアの前で困惑顔。悠月に気づき、一斉に沸く教室内。
泉水「『LILY』見たよ!すごいね、藤堂さん!」
莉佳「実はこういうの好きなの?意外!」
悠月「いや……」
うろたえる咲奈。
咲奈「て、提案したのは私なの。だからその、これは私の好みっていうか……」
泉水「そうなの!?」
美鈴「咲奈プロデューサーじゃん」
莉佳「確かに、星川さん可愛いもの好きだもんね。前から合ってるなって思ってたんだよね!」
花火「分かる~雰囲気が合ってるよね」
咲奈(私に……合ってる……)
咲奈『そう、なんだ』
再び雑誌に載る自分を見つめ、笑顔を見せる咲奈。それを慈しむように見つめる悠月。
〇教室、LHR
黒板に縦書きで『白雪姫、シンデレラ、不思議の国のアリス、赤ずきん』の文字。不思議の国のアリスの下に沢山の正の字。
学級委員B「文化祭でやる演劇は『不思議の国のアリス』に決まりましたー!」
泉水「最近映画やってたし人来そうだよね」
莉佳「ねー配役どうする?特にアリス!」
クラス中がシンとする。手を挙げる人は誰もいない。1人の男子が家をあげる。
男子A「やっぱ藤堂にやってもらいたいよなー。集客的に」
悠月「……主役は遠慮するわ」
男子B「星川は?この前雑誌載ってたし良いんじゃね」
咲奈(え、私……?)
泉水「良いじゃんそれ!咲奈ちゃんいつも可愛いもの持っててピッタリ!」
学級委員B「星川さん、どうですか?」
咲奈「えっ、と……他にアリス役やりたいって人はいないですか?」
静まる教室内。
咲奈「どう思う?悠月」
隣の悠月に声を掛ける咲奈。
悠月「咲奈がやるなら、私は出来る範囲で手を貸すよ」
立ち上がる咲奈。
咲奈「や、やります!可愛いもの、好きなので!」
〇数日後、教室、演劇練習
教室の前方で劇の練習をする演者たち。
*演者は咲奈(アリス)、泉水(白うさぎ)、大地(ドードー鳥)、悠月(チェシャ猫)、花火(3月うさぎ)、陽向(帽子屋)、美鈴(ハートの女王)、他男女数名
教室の後方では大道具、小道具が制作されている。*柚、優海、莉佳は小道具担当
泉水「うーん……アリスのセリフは完璧なんだけど……」
大地「演劇ではない、な」
陽向「棒立ちで活発な女の子感がないよなぁ」
泉水「アンタはまずセリフ覚えなさいよ。でも確かに、セリフを言う時に動きがあった方がそれっぽい、とは思うな」
咲奈(動き……)
咲奈「そ、そうだよね……」
台本にメモを書く咲奈。しかし手がふと止まる。
咲奈モノ『演劇の動きって——?』
1人悩む咲奈。悠月がはっと思い出したように口を開く。
悠月「『バラ色勇者』、『混沌学園』、『Hero Girls 2』『はつ恋マドリード』」
咲奈(あっ)
顔を見合わせる咲奈と悠月。ひらめく咲奈、頷いて笑みを浮かべる悠月。
その様子を不思議そうに見る他演者たち。
〇夜、咲奈・家、咲奈の部屋
咲奈「……よし!」
パソコンにDVDを入れる咲奈。*桜井アリサが出演している舞台映像
台本にメモを書く咲奈、アリサと同じ動きをする咲奈。
悠月とビデオ通話で話しながら練習する咲奈。*アドバイスをしつつ優しく見守る悠月
悠月「いいんじゃない?」
咲奈「そうかな?でもアリサちゃんの舞台で勉強できる日がくるとはなぁ」
悠月「私も、ウォーキングやポージングは全部アリサで勉強したよ」
咲奈「そうなの!?」
咲奈モノ『思いがけない共通点。なんだか嬉しい——』
胸を躍らせる咲奈。
〇数日後、教室、文化祭準備
机を全て後ろに下げた教室。前方に演者、他のクラスメイトは立ち稽古を見ている。できかけの背景や小物、衣装などが生徒たちの机の上や床に置かれている。
咲奈(アリス)「……あれ?私、夢を見ていたの……?」
床に座り、辺りを見渡す(演技)咲奈。
泉水「良いじゃん!めっちゃ本格的な演劇みたい……」
女子A「なんか、本格的じゃない?」
女子B「星川さんすっご!」
沸き立つクラスメイトたち。
大地「確かに良くなったけど、気持ちの表現は曖昧じゃね?」
陽向「うん。伝わってこないっていうか」
泉水「だからアンタはセリフを覚えてから言いなさいよ、そういうことは」
陽向「それは……」
大地「でも本当のことだろ? 気持ちが伝わらなきゃ盛り上がらないだろ観客は」
クラスメイトたちに問いかける大地。
女子A「まあ……」
女子B「それは……ね?」
チラチラと目くばせし合うクラスメイトたち。
大地「一番出番が多い主役が肝心なんだからさ、頑張ってもらわないと」
咲奈「う、うん。頑張るね……」
台本を握りしめて言う咲奈。*台本ボロボロ、付箋たくさん
教室内はどんよりと重い空気、沈黙が広がる。
悠月「ちょっと。ただでさえ負担が偏りがちなのに、さらに圧をかけることないでしょ。まだ時間はあるんだから」
咲奈(悠月……)
教室の重い空気が晴れ、徐々に話し始めるクラスメイトたち。
泉水「そうだよ、星川さん気にし過ぎないで!本番まで1週間もあるんだし!」
柚「衣装と背景完成したら気持ちついてくると思うよ」
男子A「俺らも星川さんのためにも、大道具頑張るかー!な?お前ら!」
賑やかになるクラスメイトたち。それぞれの作業を始める中、ひとり考え込む咲奈。
咲奈モノ『アリスの、気持ち——』
その様子を心配そうに見る悠月と友人たち。
〇放課後、教室
ガヤガヤと賑わう教室。帰りの支度をする生徒たち。
咲奈の周りに集まる友人達。
美鈴「今日さ、映画観に行かない?」
花火「行きたい!見たいやつあったんだー」
柚「白夜ストリートの流星くんが主演のやつ?」
優海「私も行く!咲奈はどうする?」
暗い顔をあげ、作り笑いをする咲奈。
咲奈(とてもそんな気分じゃ……)
咲奈「ご、ごめん。今日はちょっと……」
震える声で言う咲奈。
美鈴「そっかー。じゃあ仕方ないね」
柚「映画今度にしよっか」
花火「ね。一緒に観たいもんね」
咲奈(みんな……)
優海「あ、駅前にできたカフェとかどう?」
美鈴「いいじゃん!」
柚「じゃ、咲奈また明日ー」
咲奈の元を去っていく友人達。咲奈は手を振って見送る。その様子を横目で気にする悠月。
〇静かになった教室
1人台本を読み込む咲奈。台本には『アリス「もう!この世界、一体どうなっているのかしら?」』と書かれている。
咲奈モノ『アリスの気持ち……』
咲奈(動揺、驚き……あとは——?)
そこに悠月がやってくる。
悠月「あまり根を詰めない方が良いよ」
咲奈「悠月、帰ったんじゃ……」
窓の外を指さす悠月。外は雨が降っている。
悠月「雨宿り」
素っ気なく答える悠月にほほ笑む咲奈。
咲奈「……ありがとう」
悠月「それで、どこに悩んでいるの?」
咲奈「アリスの気持ちを理解しようとしてるんだけど……そもそもこのお話自体掴みどころがないから……」
隣の席に座る悠月。自身の鞄から台本を取り出す。*鞄の底に折り畳み傘がある
台本に目を通す悠月。
悠月「私は少しだけど分かる部分があるよ」
咲奈「え?」
悠月「……例えば、ここ」
台本の1箇所を指し示す悠月。