月に恋する一番星【マンガシナリオ】
9、大切にしたい想い。
〇続き、教室
台本の1箇所を指し示す悠月。*終わらないお茶会からアリスが逃げ出すシーン
悠月「多分、1つに恐怖。自分の中にある常識が世界の常識ではないって、自分だけが取り残されたような強い孤独感があったと思う。それは全体的にそうだけど、ここは特に」
咲奈「確かに……」
悠月「場面ごとに、自分ならどういう気持ちになるか書き出してみたら?」
1枚のルーズリーフを咲奈に渡す悠月。
〇30分後、教室
雨は未だに降っている。考えながらルーズリーフに書き出す咲奈、スマホを操作する悠月。
咲奈「悠月、ここはどう思う?」
差し出された台本を読み込む悠月。その姿を見つめる咲奈。
咲奈モノ『私が悠月を好きだってことに驚きはなかった。むしろストンと心に落ちたような……』
真剣に考えこむ悠月。
咲奈モノ『昔から、話題についていけないことがあった』
〇(回想)小学校
小学生の咲奈と友人達
小学生友人A「昨日のドラマ見た?スターナイトの凜人くんかっこよかったよね!?」
小学生友人B「うんうん!夢幻エナジーの春日くんもカッコよかった!咲奈は誰が好き?」
話題は少女漫画原作のドラマの話。複数の男子が主人公の女の子を取り合う話。
咲奈「えー?私は主人公の子が一番好きだよ」
一瞬、場がシンとなり、笑いの渦が起こる。
小学生友人A「それはみんなそうじゃん!」
小学生友人B「咲奈おもしろーい。普通は男子の中から選ぶの!で、誰?」
咲奈「うーん……。ちょっと分かんないかも」
(回想終了)
〇再び、教室
咲奈モノ『普通じゃなかもしれない。みんなの好きな人ともちょっと違うけど——』
友人達の恋バナを思い出す咲奈。
頬杖をついて悠月を見つめる咲奈。視線に気づいた悠月が咲奈の方を見る。
目が合う2人。
少し微笑んで首を傾げる悠月に、慌てて顔を背ける咲奈。
咲奈モノ『私は、私の想いを大事にしたい——』
そこに慌ただしく咲奈の友人達が教室に入って来る。
美鈴「もぉやばすぎー!」
柚「つかれたぁー」
花火「あれ、咲奈まだいたの?」
優海「藤堂さんも!」
驚いて立ち上がる咲奈。ゾロゾロと咲奈の席の周りに座りはじめる友人達。
悠月は少し離れた席に移動する。
咲奈「みんなどうしたの?」
美鈴「いやそれがさ、昇降口で先生に捕まっちゃってさ」
柚「おもーい荷物を準備室に運ばされてたの」
花火「で、休もうかと思って」
優海「もしかしてお邪魔だった?それ、すごいね」
咲奈の書いた分析メモを指さす優海。
咲奈「えっと、これはその……練習で言われたこと、どうにかしようと思って」
美鈴「じゃ、私もやろうかなー」
花火「私も!」
鞄から台本を取り出す美鈴と花火。
柚「アリスの衣装ね、今こんな感じだよー」
柚が咲奈にスマホの画面を見せる。画面には殆ど完成間近のアリスの衣装。
咲奈「可愛い……!」
美鈴「うちらの衣装も見たい!」
スマホを操作し、美鈴と花火に画面を見せる柚。
花火「すっご……」
優海「チェシャ猫はこんな感じだよ」
スマホの画面を悠月に見せる優海。
悠月「……すごいね」
美鈴「ね!どれもめっちゃオシャレ」
柚「衣装のデザインね、全部莉佳ちゃんが考えてくれたんだー。家庭科部のエースだよ」
優海「ファッションデザイナー目指してるんだって」
柚「どー?イメージつきそう?」
咲奈「……うん!ありがとう」
花火「アリスは主人公だから大変だよね……あ、」
台本を捲りながら話していた美鈴の手が止まる。
花火「ここのシーン、なんだか人生って感じしない?」
台本をの一部分を指さす花火。*コーカスレースの場面。
優海「『コーカス・レース』。それぞれ好きな時に走り出し、好きな時に止める徒競走。……これが?」
花火「うん。みんなバラバラでしょ?生まれる時も死ぬ時も。で、ここ」
再び台本の一部を指さす花火。注目する一同。
花火「このレースの勝敗は『みんなが優勝』。ってことは、どんな人生もそれぞれが優勝ってことなんじゃない?」
美鈴「……確かに!」
優海「めっちゃ良い解釈だね」
柚「流石、学年1位は言うことが違うねぇ」
顔を赤らめて照れる花火。
花火「みんな褒めすぎだよー。藤堂さんはどう思う?」
スマホを見ていた悠月が顔をあげる。
悠月「……理想的な解釈だと思う。でも、悪くはないんじゃない」
優海「理想的って?」
悠月「みんなの人生が本当に優勝なら良いけど、人を傷つける人や残酷なことをする人の人生が優勝とは思えない。……それに、何もしていなくてもハートの女王みたいな人に、ただ気に入らないってだけで死に追いやられてしまうこともある」
淡々と語る悠月。真剣な表情をする咲奈たち。
花火「……確かに」
悠月「でも、童話だし理想があった方が明るくて良いかもしれないけれど」
考え込む一同。
そこに、美鈴が口を開く。
美鈴「……アリスが場所によって自分の姿を変えるの、ちょっと分かるなぁ」
咲奈「え?」
美鈴「私、部活では2年のリーダーやってるし、これでも生徒会長だから真面目な感じだけど、ここではそんな感じじゃないでしょ?」
柚「確かにー。私も今はこんな感じだけど、家ではめっちゃ喋る」
咲奈「そうなの!?」
花火「私は逆に家では静かな方かも。優海は彼氏によく甘えるって言ってたよね」
優海「うん。咲奈は?そういうのある?」
咲奈(私は——)
咲奈「わ、私ね、桜井アリサちゃん推してて……休日は推し活してる!」
ハッとする友人一同。
美鈴「アリサちゃん可愛いよね~」
花火「なんか、可愛いの好きだからイメージ通りだよね」
優海「そっか!咲奈が木曜日テンション高いのってそれ?アリサちゃんのドラマって木曜日だよね?」
美鈴「ほんとだ!そういうことだったのね」
花火「咲奈はホント『可愛い』が好きだよね」
柚「なるほど……てことは可愛い系男子か……」
咲奈「え?」
優海「ちょ、ちょっと柚……!」
柚の口をふさごうとする優海。目を泳がせる美鈴と花火。
頭の上に?を浮かべる咲奈。
顔を見合わせる友人達。優海が口を開く。
優海「その……。咲奈の好きな人ってどんな人なのかなって、よく皆で言い合っててさ。ごめんね勝手に」
咲奈「いや、大丈夫だけど……」
美鈴「で、どうなの!?やっぱり可愛い系男子?」
身を乗り出して尋ねる美鈴。悠月の眉がピクリと動く。
咲奈「え、えっと……」
悠月を盗み見る咲奈。悠月は興味のない素振りで机に置かれた台本を凝視している。シャーペンを持つ手に力が入る。
咲奈「か、可愛い系っていうか綺麗?や、でも可愛いのも似合う、と思う。なんか、キラキラしてるっていうか……」
顔を赤らめて話す咲奈。
美鈴「『キラキラしてる』って……」
思案する友人達。
悠月は動揺し、持っていたシャーペンを落とす。
悠月と咲奈の様子を見て何かに気づいた様子の美鈴が慌てて口を開く。
美鈴「そ、そうだ、好きピといえば文化祭のジンクスあるじゃん?」
柚「なにそれー?」
花火「知ってる!後夜祭で同じ場所で夜空の写真を撮ると、永遠の愛で結ばれるってやつ!」
目を輝かせる花火。
優海「私それ去年やったよー」
咲奈「そんなのあるんだ……」
美鈴「藤堂さんの前の学校ではそういうジンクスなかった?」
落としたシャーペンを拾った悠月が顔をあげる。*動揺を取り繕った顔
悠月「あるわけないでしょ。女子校なんだから」
柚「いやいや、そうとも限らないよー?」
うんうん、と頷く咲奈と友人達。その様子に少し驚く悠月。
悠月「……さあ、知らない。興味なかったし」
咲奈モノ『永遠の愛で結ばれるジンクス、か……』
〇文化祭当日、体育館ステージ
幕が下がっているステージ上で準備をするクラスメイトたち。
衣装を着た演者たちが真ん中で集まっている。
泉水「よし、みんな頑張ろ!」
大地「アリス役、頼んだぞ」
陽向「セリフは完璧だ!」
泉水「それは当たり前だってば」
咲奈「忘れちゃっても大丈夫。みんな、楽しもう!」
頷く演者一同。
〇上演開始
アナウンス「次は、2年C組によります演劇『不思議の国のアリス』です」
咲奈(アリス)以外の演者と、背景の準備をしていたクラスメイトたちがステージ袖に移動し、咲奈(アリス)が1人で立っている。
真っ直ぐ前を見据える咲奈。
咲奈モノ『みんなで創り上げた舞台——』
準備するクラスメイトたちや、放課後に悠月や友人たちとアリスについて語り合ったことを回想する咲奈。
音楽と共に幕が上がる。
咲奈モノ『成功させてみせる——!』
台本の1箇所を指し示す悠月。*終わらないお茶会からアリスが逃げ出すシーン
悠月「多分、1つに恐怖。自分の中にある常識が世界の常識ではないって、自分だけが取り残されたような強い孤独感があったと思う。それは全体的にそうだけど、ここは特に」
咲奈「確かに……」
悠月「場面ごとに、自分ならどういう気持ちになるか書き出してみたら?」
1枚のルーズリーフを咲奈に渡す悠月。
〇30分後、教室
雨は未だに降っている。考えながらルーズリーフに書き出す咲奈、スマホを操作する悠月。
咲奈「悠月、ここはどう思う?」
差し出された台本を読み込む悠月。その姿を見つめる咲奈。
咲奈モノ『私が悠月を好きだってことに驚きはなかった。むしろストンと心に落ちたような……』
真剣に考えこむ悠月。
咲奈モノ『昔から、話題についていけないことがあった』
〇(回想)小学校
小学生の咲奈と友人達
小学生友人A「昨日のドラマ見た?スターナイトの凜人くんかっこよかったよね!?」
小学生友人B「うんうん!夢幻エナジーの春日くんもカッコよかった!咲奈は誰が好き?」
話題は少女漫画原作のドラマの話。複数の男子が主人公の女の子を取り合う話。
咲奈「えー?私は主人公の子が一番好きだよ」
一瞬、場がシンとなり、笑いの渦が起こる。
小学生友人A「それはみんなそうじゃん!」
小学生友人B「咲奈おもしろーい。普通は男子の中から選ぶの!で、誰?」
咲奈「うーん……。ちょっと分かんないかも」
(回想終了)
〇再び、教室
咲奈モノ『普通じゃなかもしれない。みんなの好きな人ともちょっと違うけど——』
友人達の恋バナを思い出す咲奈。
頬杖をついて悠月を見つめる咲奈。視線に気づいた悠月が咲奈の方を見る。
目が合う2人。
少し微笑んで首を傾げる悠月に、慌てて顔を背ける咲奈。
咲奈モノ『私は、私の想いを大事にしたい——』
そこに慌ただしく咲奈の友人達が教室に入って来る。
美鈴「もぉやばすぎー!」
柚「つかれたぁー」
花火「あれ、咲奈まだいたの?」
優海「藤堂さんも!」
驚いて立ち上がる咲奈。ゾロゾロと咲奈の席の周りに座りはじめる友人達。
悠月は少し離れた席に移動する。
咲奈「みんなどうしたの?」
美鈴「いやそれがさ、昇降口で先生に捕まっちゃってさ」
柚「おもーい荷物を準備室に運ばされてたの」
花火「で、休もうかと思って」
優海「もしかしてお邪魔だった?それ、すごいね」
咲奈の書いた分析メモを指さす優海。
咲奈「えっと、これはその……練習で言われたこと、どうにかしようと思って」
美鈴「じゃ、私もやろうかなー」
花火「私も!」
鞄から台本を取り出す美鈴と花火。
柚「アリスの衣装ね、今こんな感じだよー」
柚が咲奈にスマホの画面を見せる。画面には殆ど完成間近のアリスの衣装。
咲奈「可愛い……!」
美鈴「うちらの衣装も見たい!」
スマホを操作し、美鈴と花火に画面を見せる柚。
花火「すっご……」
優海「チェシャ猫はこんな感じだよ」
スマホの画面を悠月に見せる優海。
悠月「……すごいね」
美鈴「ね!どれもめっちゃオシャレ」
柚「衣装のデザインね、全部莉佳ちゃんが考えてくれたんだー。家庭科部のエースだよ」
優海「ファッションデザイナー目指してるんだって」
柚「どー?イメージつきそう?」
咲奈「……うん!ありがとう」
花火「アリスは主人公だから大変だよね……あ、」
台本を捲りながら話していた美鈴の手が止まる。
花火「ここのシーン、なんだか人生って感じしない?」
台本をの一部分を指さす花火。*コーカスレースの場面。
優海「『コーカス・レース』。それぞれ好きな時に走り出し、好きな時に止める徒競走。……これが?」
花火「うん。みんなバラバラでしょ?生まれる時も死ぬ時も。で、ここ」
再び台本の一部を指さす花火。注目する一同。
花火「このレースの勝敗は『みんなが優勝』。ってことは、どんな人生もそれぞれが優勝ってことなんじゃない?」
美鈴「……確かに!」
優海「めっちゃ良い解釈だね」
柚「流石、学年1位は言うことが違うねぇ」
顔を赤らめて照れる花火。
花火「みんな褒めすぎだよー。藤堂さんはどう思う?」
スマホを見ていた悠月が顔をあげる。
悠月「……理想的な解釈だと思う。でも、悪くはないんじゃない」
優海「理想的って?」
悠月「みんなの人生が本当に優勝なら良いけど、人を傷つける人や残酷なことをする人の人生が優勝とは思えない。……それに、何もしていなくてもハートの女王みたいな人に、ただ気に入らないってだけで死に追いやられてしまうこともある」
淡々と語る悠月。真剣な表情をする咲奈たち。
花火「……確かに」
悠月「でも、童話だし理想があった方が明るくて良いかもしれないけれど」
考え込む一同。
そこに、美鈴が口を開く。
美鈴「……アリスが場所によって自分の姿を変えるの、ちょっと分かるなぁ」
咲奈「え?」
美鈴「私、部活では2年のリーダーやってるし、これでも生徒会長だから真面目な感じだけど、ここではそんな感じじゃないでしょ?」
柚「確かにー。私も今はこんな感じだけど、家ではめっちゃ喋る」
咲奈「そうなの!?」
花火「私は逆に家では静かな方かも。優海は彼氏によく甘えるって言ってたよね」
優海「うん。咲奈は?そういうのある?」
咲奈(私は——)
咲奈「わ、私ね、桜井アリサちゃん推してて……休日は推し活してる!」
ハッとする友人一同。
美鈴「アリサちゃん可愛いよね~」
花火「なんか、可愛いの好きだからイメージ通りだよね」
優海「そっか!咲奈が木曜日テンション高いのってそれ?アリサちゃんのドラマって木曜日だよね?」
美鈴「ほんとだ!そういうことだったのね」
花火「咲奈はホント『可愛い』が好きだよね」
柚「なるほど……てことは可愛い系男子か……」
咲奈「え?」
優海「ちょ、ちょっと柚……!」
柚の口をふさごうとする優海。目を泳がせる美鈴と花火。
頭の上に?を浮かべる咲奈。
顔を見合わせる友人達。優海が口を開く。
優海「その……。咲奈の好きな人ってどんな人なのかなって、よく皆で言い合っててさ。ごめんね勝手に」
咲奈「いや、大丈夫だけど……」
美鈴「で、どうなの!?やっぱり可愛い系男子?」
身を乗り出して尋ねる美鈴。悠月の眉がピクリと動く。
咲奈「え、えっと……」
悠月を盗み見る咲奈。悠月は興味のない素振りで机に置かれた台本を凝視している。シャーペンを持つ手に力が入る。
咲奈「か、可愛い系っていうか綺麗?や、でも可愛いのも似合う、と思う。なんか、キラキラしてるっていうか……」
顔を赤らめて話す咲奈。
美鈴「『キラキラしてる』って……」
思案する友人達。
悠月は動揺し、持っていたシャーペンを落とす。
悠月と咲奈の様子を見て何かに気づいた様子の美鈴が慌てて口を開く。
美鈴「そ、そうだ、好きピといえば文化祭のジンクスあるじゃん?」
柚「なにそれー?」
花火「知ってる!後夜祭で同じ場所で夜空の写真を撮ると、永遠の愛で結ばれるってやつ!」
目を輝かせる花火。
優海「私それ去年やったよー」
咲奈「そんなのあるんだ……」
美鈴「藤堂さんの前の学校ではそういうジンクスなかった?」
落としたシャーペンを拾った悠月が顔をあげる。*動揺を取り繕った顔
悠月「あるわけないでしょ。女子校なんだから」
柚「いやいや、そうとも限らないよー?」
うんうん、と頷く咲奈と友人達。その様子に少し驚く悠月。
悠月「……さあ、知らない。興味なかったし」
咲奈モノ『永遠の愛で結ばれるジンクス、か……』
〇文化祭当日、体育館ステージ
幕が下がっているステージ上で準備をするクラスメイトたち。
衣装を着た演者たちが真ん中で集まっている。
泉水「よし、みんな頑張ろ!」
大地「アリス役、頼んだぞ」
陽向「セリフは完璧だ!」
泉水「それは当たり前だってば」
咲奈「忘れちゃっても大丈夫。みんな、楽しもう!」
頷く演者一同。
〇上演開始
アナウンス「次は、2年C組によります演劇『不思議の国のアリス』です」
咲奈(アリス)以外の演者と、背景の準備をしていたクラスメイトたちがステージ袖に移動し、咲奈(アリス)が1人で立っている。
真っ直ぐ前を見据える咲奈。
咲奈モノ『みんなで創り上げた舞台——』
準備するクラスメイトたちや、放課後に悠月や友人たちとアリスについて語り合ったことを回想する咲奈。
音楽と共に幕が上がる。
咲奈モノ『成功させてみせる——!』