初恋が実る瞬間、異世界召喚に邪魔された私。聖女なんて断固拒否させていただきます!〜魔王な幼馴染の溺愛は、世界を越えるようです〜
 私はオリヴェルさんの言葉に驚愕する。

 もう何回驚いたのかわからなくなってきた。

 全く身に覚えがないのに、そんなこと言われてもすっごく困る。

「でも、私には全く記憶がないんですけど……?」

 ここで前世の記憶でも蘇ればいいけど、全くそんな気配はない。

 前世の名前らしい「リーディア」という言葉を聞いても、何も感じないし。

「それこそ、貴女様が……リーディア様が神に愛された証です。神の祝福により、リーディア様の記憶は天上界に召し上げられたのですよ」

 ……どうやらこの世界の神様の祝福は、記憶を失うことらしい。

 そういえば、以前誰かが言っていたっけ。

 ──忘却は神様からの贈り物、だと。

 忘れちゃいけないことはたくさんあるけれど、それでも忘れられたからこそ、前向きになれることもあると思う。

 もしその贈り物がなければ、辛かったこと、悲しかったこと、嫌だったこと……。そんな記憶が永遠に薄れることなく続くことになってしまう。

 そんなの、とても耐えられる気がしない。

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