初恋が実る瞬間、異世界召喚に邪魔された私。聖女なんて断固拒否させていただきます!〜魔王な幼馴染の溺愛は、世界を越えるようです〜
 こうして何もせず一人っきりになると、ずっと我慢していた想いが溢れ出てきて……。

 気がつくと、涙が頬を伝っていた。

「……きーくん……っ」

 ──会いたい、会いたい、会いたい……っ!!

 自分が異世界に来たなんて、本当はいまだに信じられない。

 だけど必死にこの世界に慣れるフリをしていた。

 ──そうでもしなきゃ、心が壊れてしまいそうだったから。

 私はブレスレットにそっと触れてみた。

 銀色に光る鎖と、透き通るように綺麗な青い石。

 私ときーくんを繋ぐ、たった一つの証。

「……絶対に帰る方法を見つけるから──待っててね」

 私はありったけの気持ちを込めて、青い石に口付けた。

 ──私の想いが、きーくんに届きますように、と願いを込めて。

 窓を見上げれば青い月が輝いていて、この世界にも月があるんだな……と、ぼんやり思う。

 ……また明日が来たら、図書館で調べ物をして……あ、その前に朝ごはん食べなきゃ。

 ……朝ごはんはフィテーラだっけ……。美味しかったなぁ……と、思ったところで、私は何かの違和感を感じた。

「……あれ? 何かおかしい……?」

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