初恋が実る瞬間、異世界召喚に邪魔された私。聖女なんて断固拒否させていただきます!〜魔王な幼馴染の溺愛は、世界を越えるようです〜
 私は何がおかしいのか、頭の中で整理してみる。

 すると、私が違和感を感じた理由に気がついた。

 ──どうしてオリヴェルさんは、私がフィテーラを好きだと知っていたの……?

 ヘリヤさんから聞いたのかな、と思ったけれど、彼女は食器を片付けた後、私を食事室に案内してくれた。

 その時にはすでにオリヴェルさんは座っていたから、ヘリヤさんから報告を受ける時間はなかったはず。

 私はさらに記憶を辿っていった。

 ……そもそも、あのフィテーラはオリヴェルさんが私に持って行くように、とヘリヤさんに指示したって……。

『──神官長様が図書館にいらっしゃる聖女……ヒナタ様に、軽食をお持ちするようにと指示されたんですよ』

 そう、ヘリヤさんは言っていた、けれど。

 オリヴェルさんは私に軽食を持って行くように言っただけで、フィテーラを持って行くようにとは言っていない……?

 だけど、この世界で軽食と言えばフィテーラのことかもしれないし、私の勘違いかもしれない。

「……うん、きっと勘違い……だよね」

 私は自分に言い聞かせるように、ポツリと呟いてみるけれど……。

 その違和感はずっと、棘のように突き刺さったまま、私の心に残り続けた。
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