雨の物語 ザ レイニーズストーリー
 順子が何か探し物を始めました。 「何 探してるの?」
「入れておいたはずの定期が無いの。」 「え? そりゃあ大事件だ。」
ポシェットの仲にも定期入れは入っていないようで、、、。 また何処かに落としているのかも?
 入学早々に事件ばかり起こす人なんだなあ。 ぼくは見付かるまで付き合うことにした。

 歩いてきた道を見回しながら昇降口まで戻ってきます。 先生たちも後片付けやらオリエンテーリングの準備やらで忙しそう。
そしてぼくらは教室にまで戻ってきた。 順子は真っ青な顔をしています。
 乗る予定だったバスは行ってしまいました。 教室の中を探し回っていると、、、。
「有った!」という声が、、、。 振り返るとそこは遠藤君の机の中。
 「何で遠藤君の机に入ってるの?」 順子はぼくに聞いてくるけど、そんなの分からない。
「それより何より帰ろうよ。」 「そうね。 でも疲れちゃった。」
「ぼくのほうが、、、。」と言い掛けたけどそれを飲み込んでぼくも椅子に座り込んでしまった。

 この高校は市立でね、30人4クラス制なんだ。 でも他の市や町からも来てるみたい。
ぼくらはb組。 成績はみんな中くらいかな。
大して良くも悪くもないってところ。 だから目立つことも無いんだ。
 ほとんどは小学校からの連れ添いで気心の知れた連中だ。
校区が違ったから初めて一緒になった人たちも居るけどね。
それでもみんな全く知らないわけじゃない。 遊んでたから。

 さてさて、順子が立ち上がったのは30分くらい休んでから。 教室を出ると見回りをしていた重松先生と会ってしまった。
「お前たち、何をしてるんだ?」 「忘れ物をしたから取りに来たんです。」
「そうか。 それだけならいいけど、陰で悪いことするなよ。」 重松先生はぼくを見てニヤニヤしています。
 昇降口を出るとぼくらはまたバス停に向かって歩き始めました。 校門の傍には桜の木が植えてあります。
すっかり葉桜になっていて地面に花弁が舞い散っていますね。 見たかったなあ。
 またまたぼくらは無言でバス停にまで来ました。 他の人たちは帰ってしまったようです。
さっきと同じく車が通り過ぎて行きます。 空には白い雲が浮かんでいます。
 何も話すことが無いままにぼくらは同じバスに乗り込みました。

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