ノート

グループ内ユニット

 俺は多分、「この件」について一番詳しい人間だと思う。


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 中学時代、クラスに仲よし三人組みたいな女子がいた。

 雑だけど以下A、B、Cと呼ぶ。話の中心はAとBだ。
 まずAは、容姿も成績もかなりのレベルで、やや気難しいが基本的に親切。当時はそんな言葉はなかったが、いわゆる一軍女子扱いでもおかしくないタイプだったと思う。
 Bは肥満児で不細工で成績も最底辺。子供が好きだから保母(今でいう保育士)になりたいと言っているが、そもそも行ける高校があるのかと皆から嗤われていた。親が会社をやっているから家はけっこう裕福で、12歳離れた優秀な兄がいた。
 Cはとにかく目立たない女子。顔は結構かわいいが、消極的な成績で勉強もできない。中学に入るとましになったものの、小学校のときは、今の言葉でいうと「場面緘黙(かんもく)(**下記注)」と思われる振る舞いをしていた。

 周囲のお節介な女子たちがAに、「BやCみたいな低レベルな子と付き合わない方がいい」としょっちゅう言っていたが、Aはどこ吹く風で、テスト前にはB、Cの勉強を見てやったり、休みの日は遊びにいったりしていた。

 Aを何となくよく思わないやつが、「親切ぶってるが、引き立て役として2人をそばに置いているだけだ」と言い出した。
 そう言われて本気にしたり、尻馬に乗るように一緒になって悪口を言うやつもいたが、少なくとも、クラスのお荷物みたいな2人の世話をAがやっているのも事実で、ほかの連中にとっては正直ありがたい存在だったし、担任もAのことを模範生だと絶賛していた。

 しかし、3人は同じ高校に進学することはできない。成績も家の経済状態も差があり過ぎた。
 Aは普通に地元の難関公立に進学し(ちなみに俺も同じ高校だったが、一度も同じクラスになったことはなかった)、Bは「名前書けば入れる」と言われるレベルの私立女子校に専願で入学。Cはあまり家が裕福ではなかったので、郡部の定員割れを起こすような公立に入った。

 ここで3人ばらばらになるかと思ったら、AとBは友達付き合いを続けた(Cについては不明だったが、後ほど判明)。
 Aは高校に入るとすぐ彼氏ができたが、ついでに彼氏の友人をBに紹介。しかし彼氏友人はBを気に入らず、しかもAにこっそり告白したりしていたらしい。彼氏と彼氏友人はこれが原因で仲違いし、Aも彼氏と別れた。

 もともとAをよく思っていなかったやつの1人が「多分こうなることが分かっていて、わざと紹介したに違いない」という邪推交じりで言っていたが、これは正直、誰が悪かったのか分からない。

 それから何年かして、Aは高校を卒業後、進学も就職もせず、Bの兄に嫁いだ。
 これにはみんなびっくりし、Aに悪感情を持っていなかった者すら、「実は最初からBの兄目当てだったのでは」と勘繰った。
 義理とはいえ姉妹になったAとBは、成人祝いを兼ねた中学の同窓会の場に仲よく手をつないで参加した。

 「結婚してるけど、まだ若いからいいでしょうって言ってもらって」と、恥ずかしそうに振袖を着たAが美しく、Bは「お前がそういうの着ると漫才師みたいだな」とからかわれていた。それでも2人ともにこにこ笑って幸せそうだった。

 その光景を微笑ましいと見る者も多かったが、俺にはなぜか薄気味悪く見えた。
 振袖云々ではなく、いい年齢をした女同士が手をつないで現れたからだと思う。
 俺に全く偏見や差別意識がないとは言わないが、同性だから、いいトシだから以前に、「この二人」が何となく気持ち悪く見えた。


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【場面緘黙症】

選択性緘黙(せんたくせいかんもく)[英: Selective Mutism,SM]
家庭などでは話すことが出来るのに、社会不安(社会的状況における不安)のために、ある特定の場面・状況では話すことができなくなる疾患である。 幼児期に発症するケースが多い。

参考:Wikipedia
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