ノート
義理の姉妹
ところで、Bの通っていた高校は短大の付属だったので、その短大の保育科に行こうとしていたが、成績の関係で進学できなかった。
こういっては何だが相当低レベルな学校だったのに、それでも内部進学ができなかったとなれば、他の大学や短大に入ることは絶望的だったという。このあたりはBと同じ高校に進んだやつから聞いた。
専門学校もあるが、かなり遠くの街なので、ひとり暮らしは無理だと考えたBは断念。
それでもAは「Bちゃんが本気なら、また頑張れるかもしれないから、希望だけは捨てちゃだめ」と励ましたようだ。
しかしBは本気を出すことはなく、加えて「預かっていた子供を不手際で死なせて責任を負わされた保母」みたいな話をドラマで見て怖くなったと言って、保母の夢をなかったことにしたようだ。
AはB実家のやっている会社の事務を手伝い、Bはスーパーでバイトをしていた。
Aは持ち前の要領のよさで仕事も家事もてきぱきとこなし、Bには「お手伝い程度」はしてもらったものの、「まあまあ、座っていてください、お嬢様」などとおどけて制していた。これはクラス会でB本人から聞いた無邪気に笑っていた。
Bは肥満体は相変わらずだったが、Aの手ほどきで、スキンケアや化粧に気を使ったり、似合いそうな服を選んだりしているらしい。「私、Aちゃんがいなかったら生きていけないよ」とも言っていた。
美人で優秀な姉と、出来の悪い妹の微笑ましいやりとりに、年の離れた兄と両親が目を細めていた。
そんなふうに誰もがうらやむ幸せな一家だったが、結婚して3年後、B兄は不慮の事故で亡くなった。
Aがとても若かったのと、B兄との間にまだ子供がいなかったこともあり、ご両親は好意的な意味で「うちとは縁がなかったと思って、新しい人生をやり直してほしい」と家を出ることを勧めたが、Aは、「できれば仕事を続けたい。このまま家にいさせてほしい。下宿費を払うから」とまで言ったらしい。
AはBの家と養子縁組するといううわさも立った。真相は不明。