開発部の門野さんの愛はとにかく重い。
「……私には似合わないだろう」
「え……」

　心の中を読まれたのかと思って、焦る。でも村木さんは「思って当然さ」と言いながら首を横に振った。

「先日私の弁当箱のふたが壊れてしまってね。奥さんのを借りているんだ」
「そうなのですね」

　なんだか妙に納得できた。

　彼は既婚者で、奥さんは育休中だと聞いている。彼と奥さんは十歳ほど離れているとか、なんとか。

「と、長話はいけないね。……いってらっしゃい」

　村木さんが私に軽く笑いかけて、場を立ち去る。

　……彼が最近痩せたのは、周知の事実だろう。それもこれも、全部門野さんの所為なんだけど。

（やっぱり、同士だ……）

　親近感を覚えつつ、私は村木さんの背中を見送った。

　しばらくして、李未ちゃんが私の元に駆けてくる。彼女は「遅れてごめんね」と言って頭を下げてくる。

「お昼休みに入る前に、ちょっとトラブルが起きちゃって」
「大丈夫だったの？」
「うん、もう大丈夫。先輩たちが手伝ってくれたし」

　ニコニコと笑う李未ちゃんは、私の前を歩いていく。私も慌てて彼女についていった。
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