【黒・中編・画】湖面に写る月の環[今昔擬人化小説]



書いたヒトはホウソウシの暗殺から見事、生き残ったみやこ達。


lake's Jumping fishs☆壱


水面にうつる星空


かつて、百年に一度の満月の夜、とてつもない満潮で、隣接した湖と海がつながる時、翔び魚達は湖水へ住みかを移す冒険へと挑んだ。


そして百年後、海からの度重なる潮に砕かれた湖水との壁により海路を得た。

湖水で育った翔び魚達の子孫は先祖の産まれた海に帰る。

海に宿った魚達の帰巣本能が今、呼び覚まされる。


前世は湖水の翔び魚

現代は湖水ふちの陸に暮らす女子高生。

毎晩、夢をみる水面ほしぞらに誘われた彼女は、来世は湖水に帰る事を願う。そっと願う。


私達は一緒に水面ほしぞらを毎晩、翔んだ。

上にも下にも広がる星空を私達は本能の赴くままに。それは、ほしぞら、翔ぶひれの長い小魚達(私達)は、とても美しかった。


だが、水面を翔べない、陸の生き物と生まれ変わった私を、大切な仲間達みんなはおいてゆく。

私は一人おいてゆかれたのだった。


もう脳裏に、あの煌めかんばかりの水面ほしぞらや美しかった仲間達の姿は思い出せない。









lake's Jumping fishs☆弐


輪廻の果てに


私は女子高生の時、仲間達(翔び魚達)からおいてけぼりにされた。


今では内海うちうみとなった、かつての湖水を、縦横無尽に泳いでいた。本能の赴くまま。

今では夜明け後、内海の岸辺を歩くだけなのだが。


多感な少女期を寂しい想いで過ごした。




「ねぇ、お祖母ちゃん。いつものお話をして」


初孫にあの少女期に失った星空の思い出をお話として語る。


「翔び魚達は、こうして昔に住んでいた海へと、帰って行きました。おしまい」


目をきらきらさせた孫娘が言う。「残された少女は内海で遊ばないの?」星空が綺麗なままなのに。「私ならそうする。そして海に向かうんだ」「泳がないなんて、もったいない」と言って睡魔に襲われる。


「おきゃんだね。さっちゃんは」と、私は孫娘の頭を撫でて、取り残された少女期、岸辺を歩いて、何度も何度も仲間達の帰還を願った日々に思いを馳せる。


パールブルーのワンピースを風になびかせ私は波がよせるのを虚ろに見てた。その時。


「考え直すんだ」まだそんなに若いのにと、手を引いた青年がいた。


「……」

「そんなに可愛いのに、自殺するくらいなら、彼女いない歴年齢の、ボボボボクと付き合って」


強引な夫だから、私は仲間達を無くした喪失感を埋める事が出来たのだろう。もう何十年もたつ。


亡き夫の遺影を見ながら、私は悪いと想いながらも、また翔ぶ魚達の一匹に生まれ変わる輪廻を、そっと願った。


孫娘にも「海に帰る」本能が芽吹いた事には驚いたのだけど。







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