【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】
第20話 貴教さんの好きな人
貴教さんと私は、この春イチオシとメニュー表に書かれた季節限定のイチゴのフレーバーのコーヒーとキャラメル味のエスプレッソを頼んでから席に着いた。
店内には私と貴教さんしかお客さんは座っていない。
とっくに診療時間が過ぎているからかな。
カフェの店内にはBGMに静かな耳に心地よいジャズが流れている。
「チョコちゃん、小腹空いてない? ドーナッツ一緒に食べよう?」
貴教さんは、ショーウィンドウに並べられたカラフルなチョコを纏う小さな丸くて小さなドーナツを指差した。
「えっ、ドーナッツですか?」
「そう、ドーナッツ。それとも、チョコちゃんはミニケーキの方が良いかな?」
「はっ、はい食べます。ドーナッツで良いです」
私が頷きながら返事をすると、貴教さんがカウンターで注文してきてくれた。
貴教さんってさすが気が利くよね。
喫茶店のマスターをやってるだけあるというか、元々の性格もあるのかな、とっても気配り上手。
穏やかで優しくて人情を感じさせてあったかい。それにスマートな気遣いも出来るイケメン、これはもう向かうところ敵なしの最強な男性ではないだろうか。
……敵なしって、敵って誰って感じだけれども。はははっ。
「貴教さんは、イチゴが好きなんですか?」
「うん、大好きだよ。あとイチゴ味のコーヒーなんてどんなもんかな〜? って思ってさ。好奇心かな」
カフェは病院内と言うこともあってか、少し店内が狭くてテーブルが小さい。向かい合う貴教さんとの距離が近くて、私はマルさんのことが好きなのに、なぜか貴教さんにドキドキしている。
ここのカフェはお洒落なカジュアルで、喫茶『MOON』のレトロで落ち着いた雰囲気でしっとりと馴染むお店とは、だいぶ趣が変わる。
テーブルと椅子もヨーロッパの通りのカフェテラスに、気軽に置かれてるみたい。
言うなればこのお店は若者向きのワクワクとした外国の新しい風を運ぶ洋風で、喫茶『MOON』は洋で在りながらも佇まいに良き年月を刻んでいて和にも通ずるようなどこか懐かしさを漂わせてる。
「あのさあ、こんな時に何なんだけど」
「はい?」
貴教さんは何か言いにくそうなことがあるみたいだった。
顔が苦笑いをしていて頬杖をついた。
「マルさんのこと……、チョコちゃんは本気で好きなのかな?」
「えっ? えっ?」
まあ、克己さんにも貴教さんにもトキさんにもバレているのだから、今さら隠す必要も私にはないわけだ。
だけどなぜこのタイミングなんだろう?
「はい。まだ全然お話も出来ていないし、仲良くないですけど」
「……そう」
そう言ってしまってから後悔した。
私は急にすごく恥ずかしくなったの。頬が、顔がカーッと熱くなる。
たぶん赤くなってる! 私は貴教さんから隠すように自分のほっぺに手を当てた。
貴教さんって、お兄ちゃんみたいに優しいから。
ついつい貴教さんには素直な気持ちを話してしまったけれど、これは恥ずかしかった。
誤魔化すように私は頭の中に話題を探した。
「あっ。そう言えば瑠衣が貴教さんとご飯食べたよ〜って言ってましたけど」
「うん。偶然駅で会って、瑠衣ちゃんの方から話し掛けてくれてね」
「あのっ! 瑠衣は良い子なんで、よろしくお願いします」
貴教さんはじいっと私を見つめた。
「……あっ、ごめん。俺さ、思わせぶりなことをしたくないから。チョコちゃんの友達だからこの間はバッタリ会って、瑠衣ちゃんに誘われるままに、ご飯を食べに行ってしまったけど」
貴教さんはコーヒーをひと飲みしてから、私の目に力のこもった真剣な目を向けてくる。
「瑠衣ちゃんには悪いけど。俺、実は好きな子がいるんだ」
「えっ――。貴教さん、好きな人がいるんですか」
がっかりした。
それと同時に私は貴教さんの発言に胸が痛んだんだ。
貴教さんのことが好きな瑠衣になんて言ったら良いのだろう。
店内には私と貴教さんしかお客さんは座っていない。
とっくに診療時間が過ぎているからかな。
カフェの店内にはBGMに静かな耳に心地よいジャズが流れている。
「チョコちゃん、小腹空いてない? ドーナッツ一緒に食べよう?」
貴教さんは、ショーウィンドウに並べられたカラフルなチョコを纏う小さな丸くて小さなドーナツを指差した。
「えっ、ドーナッツですか?」
「そう、ドーナッツ。それとも、チョコちゃんはミニケーキの方が良いかな?」
「はっ、はい食べます。ドーナッツで良いです」
私が頷きながら返事をすると、貴教さんがカウンターで注文してきてくれた。
貴教さんってさすが気が利くよね。
喫茶店のマスターをやってるだけあるというか、元々の性格もあるのかな、とっても気配り上手。
穏やかで優しくて人情を感じさせてあったかい。それにスマートな気遣いも出来るイケメン、これはもう向かうところ敵なしの最強な男性ではないだろうか。
……敵なしって、敵って誰って感じだけれども。はははっ。
「貴教さんは、イチゴが好きなんですか?」
「うん、大好きだよ。あとイチゴ味のコーヒーなんてどんなもんかな〜? って思ってさ。好奇心かな」
カフェは病院内と言うこともあってか、少し店内が狭くてテーブルが小さい。向かい合う貴教さんとの距離が近くて、私はマルさんのことが好きなのに、なぜか貴教さんにドキドキしている。
ここのカフェはお洒落なカジュアルで、喫茶『MOON』のレトロで落ち着いた雰囲気でしっとりと馴染むお店とは、だいぶ趣が変わる。
テーブルと椅子もヨーロッパの通りのカフェテラスに、気軽に置かれてるみたい。
言うなればこのお店は若者向きのワクワクとした外国の新しい風を運ぶ洋風で、喫茶『MOON』は洋で在りながらも佇まいに良き年月を刻んでいて和にも通ずるようなどこか懐かしさを漂わせてる。
「あのさあ、こんな時に何なんだけど」
「はい?」
貴教さんは何か言いにくそうなことがあるみたいだった。
顔が苦笑いをしていて頬杖をついた。
「マルさんのこと……、チョコちゃんは本気で好きなのかな?」
「えっ? えっ?」
まあ、克己さんにも貴教さんにもトキさんにもバレているのだから、今さら隠す必要も私にはないわけだ。
だけどなぜこのタイミングなんだろう?
「はい。まだ全然お話も出来ていないし、仲良くないですけど」
「……そう」
そう言ってしまってから後悔した。
私は急にすごく恥ずかしくなったの。頬が、顔がカーッと熱くなる。
たぶん赤くなってる! 私は貴教さんから隠すように自分のほっぺに手を当てた。
貴教さんって、お兄ちゃんみたいに優しいから。
ついつい貴教さんには素直な気持ちを話してしまったけれど、これは恥ずかしかった。
誤魔化すように私は頭の中に話題を探した。
「あっ。そう言えば瑠衣が貴教さんとご飯食べたよ〜って言ってましたけど」
「うん。偶然駅で会って、瑠衣ちゃんの方から話し掛けてくれてね」
「あのっ! 瑠衣は良い子なんで、よろしくお願いします」
貴教さんはじいっと私を見つめた。
「……あっ、ごめん。俺さ、思わせぶりなことをしたくないから。チョコちゃんの友達だからこの間はバッタリ会って、瑠衣ちゃんに誘われるままに、ご飯を食べに行ってしまったけど」
貴教さんはコーヒーをひと飲みしてから、私の目に力のこもった真剣な目を向けてくる。
「瑠衣ちゃんには悪いけど。俺、実は好きな子がいるんだ」
「えっ――。貴教さん、好きな人がいるんですか」
がっかりした。
それと同時に私は貴教さんの発言に胸が痛んだんだ。
貴教さんのことが好きな瑠衣になんて言ったら良いのだろう。