【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】
第23話 貴教さんの車で帰るチョコちゃん
私は貴教さんの白のステーションワゴンに乗らせてもらって、帰路に着く。
五月も後半でも三寒四温と言うのか少し寒さが戻ってる。
貴教さんがブランケットを貸してくれて、車内も暖房を効かせてくれているから、体が温かくなってきた。
「ありがとうございます。貴教さんはよく気がつくから女の子にモテますよね?」
「う~ん。時々は好意を寄せてくれる子が告白してくれるけど。だけど、俺は自分がわりと不器用なんじゃないかなと思う。とりあえず付き合うとか出来ないんだよね。……チョコちゃんもでしょ?」
そう貴教さんに言われると、確かにそうかもしれないと思いあたる節はあった。
お試しで付き合ってみる? なんていうシチュエーションもないしね。
恋愛に発展しそうな出逢いだって、哀しいかな、私にはそうそうないのだもの。
貴教さんや克己さんみたいに、きゃーきゃー言ってくれるファンもいなければ、告白なんて今までの人生で三回ぐらいしかしてもらったことないし。
二人が受けて来ている告白の回数なんかとは比べ物にならないと思う。
私を乗せた車は滑らかに道を走り、貴教さんの運転は彼の人柄そのものって感じがして、穏やかで気遣いを感じる。
貴教さんの横顔を見て話をしていると、落ち着いてくるから不思議だ。
さっきはちょっとドキッとすることもあったけど、今は緊張していない。
二人きりに慣れたのかな。
貴教さんの持つ何かが私に安心をくれてる。
真心、優しさ? ほんわかとした雰囲気が頼っても良いんだよって言ってくれてる気がしちゃう。
貴教さんに親戚のお兄ちゃんのみたいな親しさを醸し出してる……様な、って言ったら、苦笑いされちゃうかな?
そう、まだそんなに距離は近くはないよね。
人間関係って適度な距離が必要だと。
こちらが親しく思っているほど、向こうは思ってなかったりするかも知れないじゃない?
図々しく思わるれるのはイヤだなぁ。
貴教さんはお気に入りの喫茶店のマスターで、私はたくさん来るお客さんのなかの一人。
取るべき距離は保ちつつ、良好な関係でいるべき。
わきまえないと。勘違いしちゃいけないよね。
克己さんもそうだったけど、優しくて親切で誠実だと思う。
「ねえ、チョコちゃん」
「はい?」
「克己になにか言われた?」
「えっ? なにかって……」
貴教さんの意味深な問いに私はすぐには答えを出せなかった。
なにかってどういうことだろう?
「いや、良いんだ。……ご飯、うちで食べて行きなよ」
「悪いから良いですよ。お昼もカレーライスを頂いたし」
「あれはさ、開発中だから良いんだよ。意見が聞けて俺たちは嬉しいから。助かったよ」
車の中で喫茶『MOON』の店内にかかっていたジャズがかかっていた。年齢を問わずBGMとして心地よく感じるんじゃないかな。
「この音楽って『MOON』にかかってましたよね? 貴教さんが選んでいるんですか?」
「克己と二人で選んでいるよ。チョコちゃん、リクエストがあったら言ってよ。今度かけてあげる」
「良いんですか? じゃあどんな曲にするか選んでみます」
そこで喫茶『MOON』の駐車場に着いた。貴教さんはスーッと静かに車を駐車させる。
貴教さんはエンジンを止めて、私の方を振り向いた。
「チョコちゃん」
「はい」
貴教さんは真剣そのものの瞳で私を射抜くように見てきている。
胸が意思と反してドキリとする。
だって私はマルさんのことが好きなのに、他の人にドキリとしてしまうなんて。
「マルさんとのこと、頑張って」
「あっ、ありがとうございます」
「でさ、もし、もしもだよ? チョコちゃんはいい子だからマルさんと上手くいくと思うんだ。だけどタイミングが悪くて万が一のことがあったらさ……」
「は、はい」
貴教さんとの距離が近くなる。
私に貴教さんの影が映るぐらい。
「チョコちゃんのこと好きな奴はいるから」
そうか。貴教さんは優しいからマルさんがダメだった時のことを心配してくれたんだ。
いい人だなあ。
「ああ。大丈夫ですよ。私、振られるの慣れてますから」
「慣れないよ、きっと。いつでもどんな恋も失恋は痛いはずだ」
ふうっと息をついて、貴教さんは肩の力を抜いた。
微笑んで、貴教さんは「応援するよ」と言ってくれた。
この時、貴教さんの笑顔が寂しげに私の目には映っていた。
気のせいかな?
まだ気づいていなかった。
貴教さんがどうしてこんな表情を私に向けていたかだなんて。
五月も後半でも三寒四温と言うのか少し寒さが戻ってる。
貴教さんがブランケットを貸してくれて、車内も暖房を効かせてくれているから、体が温かくなってきた。
「ありがとうございます。貴教さんはよく気がつくから女の子にモテますよね?」
「う~ん。時々は好意を寄せてくれる子が告白してくれるけど。だけど、俺は自分がわりと不器用なんじゃないかなと思う。とりあえず付き合うとか出来ないんだよね。……チョコちゃんもでしょ?」
そう貴教さんに言われると、確かにそうかもしれないと思いあたる節はあった。
お試しで付き合ってみる? なんていうシチュエーションもないしね。
恋愛に発展しそうな出逢いだって、哀しいかな、私にはそうそうないのだもの。
貴教さんや克己さんみたいに、きゃーきゃー言ってくれるファンもいなければ、告白なんて今までの人生で三回ぐらいしかしてもらったことないし。
二人が受けて来ている告白の回数なんかとは比べ物にならないと思う。
私を乗せた車は滑らかに道を走り、貴教さんの運転は彼の人柄そのものって感じがして、穏やかで気遣いを感じる。
貴教さんの横顔を見て話をしていると、落ち着いてくるから不思議だ。
さっきはちょっとドキッとすることもあったけど、今は緊張していない。
二人きりに慣れたのかな。
貴教さんの持つ何かが私に安心をくれてる。
真心、優しさ? ほんわかとした雰囲気が頼っても良いんだよって言ってくれてる気がしちゃう。
貴教さんに親戚のお兄ちゃんのみたいな親しさを醸し出してる……様な、って言ったら、苦笑いされちゃうかな?
そう、まだそんなに距離は近くはないよね。
人間関係って適度な距離が必要だと。
こちらが親しく思っているほど、向こうは思ってなかったりするかも知れないじゃない?
図々しく思わるれるのはイヤだなぁ。
貴教さんはお気に入りの喫茶店のマスターで、私はたくさん来るお客さんのなかの一人。
取るべき距離は保ちつつ、良好な関係でいるべき。
わきまえないと。勘違いしちゃいけないよね。
克己さんもそうだったけど、優しくて親切で誠実だと思う。
「ねえ、チョコちゃん」
「はい?」
「克己になにか言われた?」
「えっ? なにかって……」
貴教さんの意味深な問いに私はすぐには答えを出せなかった。
なにかってどういうことだろう?
「いや、良いんだ。……ご飯、うちで食べて行きなよ」
「悪いから良いですよ。お昼もカレーライスを頂いたし」
「あれはさ、開発中だから良いんだよ。意見が聞けて俺たちは嬉しいから。助かったよ」
車の中で喫茶『MOON』の店内にかかっていたジャズがかかっていた。年齢を問わずBGMとして心地よく感じるんじゃないかな。
「この音楽って『MOON』にかかってましたよね? 貴教さんが選んでいるんですか?」
「克己と二人で選んでいるよ。チョコちゃん、リクエストがあったら言ってよ。今度かけてあげる」
「良いんですか? じゃあどんな曲にするか選んでみます」
そこで喫茶『MOON』の駐車場に着いた。貴教さんはスーッと静かに車を駐車させる。
貴教さんはエンジンを止めて、私の方を振り向いた。
「チョコちゃん」
「はい」
貴教さんは真剣そのものの瞳で私を射抜くように見てきている。
胸が意思と反してドキリとする。
だって私はマルさんのことが好きなのに、他の人にドキリとしてしまうなんて。
「マルさんとのこと、頑張って」
「あっ、ありがとうございます」
「でさ、もし、もしもだよ? チョコちゃんはいい子だからマルさんと上手くいくと思うんだ。だけどタイミングが悪くて万が一のことがあったらさ……」
「は、はい」
貴教さんとの距離が近くなる。
私に貴教さんの影が映るぐらい。
「チョコちゃんのこと好きな奴はいるから」
そうか。貴教さんは優しいからマルさんがダメだった時のことを心配してくれたんだ。
いい人だなあ。
「ああ。大丈夫ですよ。私、振られるの慣れてますから」
「慣れないよ、きっと。いつでもどんな恋も失恋は痛いはずだ」
ふうっと息をついて、貴教さんは肩の力を抜いた。
微笑んで、貴教さんは「応援するよ」と言ってくれた。
この時、貴教さんの笑顔が寂しげに私の目には映っていた。
気のせいかな?
まだ気づいていなかった。
貴教さんがどうしてこんな表情を私に向けていたかだなんて。