【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】

第27話 瑠衣の話とチョコちゃん

 私と瑠衣は布団を仲良く並べて横になった。
 瑠衣はお酒に酔ったのかな、赤い顔をしてトロンとした目を私に向けている。
 パジャマを着て、楽しい恋バナもしたしもう寝ようか。

「ねえ、千代子は不安じゃない? 将来が」
「えっ。……そ、そりゃあ不安だよ」
「そうだよね。私もさ、打算的かもしれないけど、振り向いてくれそうもない相手を待ってるとか考えたら落ち込んでさ。あんまり時間がないとか思っちゃったんだ。告白して人生を先に進めなくっちゃって」
「貴教さんのこと?」
「うん。10代とか20代ならまだ先は長いけど、私は子供も産みたいから」

 瑠衣の言うことは、すごくよく分かるから、胸に痛みが走る。
 だからと言って、婚活も始めた方がいいと思いながら、私は久しぶりの恋をマルさんに感じた気持ちを大事にしたい気持ちが大きかった。

「子供か。出産とかまだまだ考えられないな」
「だよね、でも20歳から30歳になるのってびっくりするぐらいさ、早かったでしょ?」
「そうだよね。もしかしたら……、気づいたらもう40歳になって、あっという間に50歳になってるのかな?」
「そうだよ〜、焦るでしょ?」
「うん、まあ……」

 現実感はなかった。
 瑠衣がどんどん私を置いて先に行ってしまったようには、感じていた。

「千代子にはまだ黙っててって言われてたんだけど……」
「んっ?」
「春田こっちに帰って来てるよ。会っちゃったんだ、偶然。スーパーで」
「えっ?」
「春田! 千代子の元彼のは・る・た。あいつ離婚して、地元に帰って来たんだよ」

 春田蓮都《はるたれんと》。
 結婚の約束までした私の元彼。
 蓮都《れんと》はちょっと独特なテンションで、私は彼のことがすごく好きだったがいつも振り回されていた。

 蓮都の名前を聞いただけで、ひと波乱ありそうで、私はビクビクしていた。

 会わないようにしよう。
 会わなければなんにも起こらない。

 ……はずだ。

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