【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】
第29話 マルさんと本屋さんで会ったチョコちゃん
すらっとした立ち姿でにこやかな笑顔を私に向けてくれるマルさん。
整った目鼻立ち。茶色いメガネをかけたその奥の瞳は優しくて、本屋さんのロゴ入りの茶色いエプロンをつけてて、またそれが似合うな〜。
マルさんって、本屋さんの店員さんだったんだ!
「こんばんは。チョコちゃん」
「こここ、こんばんは」
恥ずかしくて。あ〜あ、変な挨拶の仕方になっちゃたっかな?
私は慌てて前髪を直して、着ている服の上着の裾をピンッと引っ張り直した。
(来るんじゃなかった〜)
マルさんがいるなんて、恥ずかしくて。
出直してきたい。
「貴教《たかのり》くんから電話をもらったよ。東雲《しののめ》さん、お二人とも意識が戻って安心した」
「はい、良かったです。今日も友達とお見舞いに行って来たんです」
マルさんのエプロン姿にきゅんっとなる。
「そう。僕も明日にでもお見舞いに行って来るよ。チョコちゃん、なにか探している本があったら言ってね」
「はい。ありがとうございます」
マルさんは「店長〜」と他の店員さんに呼ばれて、「じゃあ」と店の奥に去って行った。
マルさんは本屋さんで働いていて店長さんなんですね。
また一つマルさんのことを知れた。
嬉しいな。
キュッとするこの胸の高鳴りが、私の思いが本物だと感じさせるのに充分だった。
私は資格の本やテキストが並ぶコーナーで真剣に選んでいた。
いつしか周りの雑音もお客さんたちの話し声も聞こえないぐらい集中していた。
「千代子……千代子…」
肩を叩かれるまで、私はまあったく気づかなかった。
二度、肩を叩かれて。
「えっ?」
振り返ると元彼の春田蓮都《はるたれんと》が、あの時と変わらない人懐っこい笑顔で立っていた。
整った目鼻立ち。茶色いメガネをかけたその奥の瞳は優しくて、本屋さんのロゴ入りの茶色いエプロンをつけてて、またそれが似合うな〜。
マルさんって、本屋さんの店員さんだったんだ!
「こんばんは。チョコちゃん」
「こここ、こんばんは」
恥ずかしくて。あ〜あ、変な挨拶の仕方になっちゃたっかな?
私は慌てて前髪を直して、着ている服の上着の裾をピンッと引っ張り直した。
(来るんじゃなかった〜)
マルさんがいるなんて、恥ずかしくて。
出直してきたい。
「貴教《たかのり》くんから電話をもらったよ。東雲《しののめ》さん、お二人とも意識が戻って安心した」
「はい、良かったです。今日も友達とお見舞いに行って来たんです」
マルさんのエプロン姿にきゅんっとなる。
「そう。僕も明日にでもお見舞いに行って来るよ。チョコちゃん、なにか探している本があったら言ってね」
「はい。ありがとうございます」
マルさんは「店長〜」と他の店員さんに呼ばれて、「じゃあ」と店の奥に去って行った。
マルさんは本屋さんで働いていて店長さんなんですね。
また一つマルさんのことを知れた。
嬉しいな。
キュッとするこの胸の高鳴りが、私の思いが本物だと感じさせるのに充分だった。
私は資格の本やテキストが並ぶコーナーで真剣に選んでいた。
いつしか周りの雑音もお客さんたちの話し声も聞こえないぐらい集中していた。
「千代子……千代子…」
肩を叩かれるまで、私はまあったく気づかなかった。
二度、肩を叩かれて。
「えっ?」
振り返ると元彼の春田蓮都《はるたれんと》が、あの時と変わらない人懐っこい笑顔で立っていた。