【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】
第32話 克己さんの背中
私は克己さんに「騒がしくてごめんなさい」とひと言謝りながら、そそくさと喫茶『MOON』をあとにしようとした。
ドアのノブに手をかけたところで、克己さんに呼び止められた。
「チョコちゃん」
「あっ、はい?」
克己さんは心配そうな顔をして、私を見ている。
蓮都は支払いを済ませたあと、さっさと外に出てしまっていた。
「やり直さないよな?」
「えっ?」
「さっきの彼、チョコちゃんには合わない気がする」
私は克己さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
お客さんの声が「マスター、注文」と店内から聞こえると、克己さんは「はい、ただいま」と返事をして私とパーテーションの横を抜けていく。
克己さんは歩みを止めて振り返ると真っ直ぐ私の目を見た。
克己さんに視線をぶつけられて、なぜか小さく私の胸がドキリとする。
「チョコちゃん、流されないで」
克己さんはそう言って背中を見せた。
私は克己さんの背中が少し怒っているような気がした。克己さんに苛立ちみたいなものを感じて、私のなかでチクンとした胸の痛みが走った。
なん、だろう。
私と克己さんや貴教さんは、マスターとお客さんの一人の関係。
友達みたいになってきたから?
でも、曖昧だ。
友達と呼べるほど親しくはないと思う。
ただ、私は克己さんにまた心配をかけてしまっているんだ。
私はなんだか申し訳ない気持ちになっていた。
ドアのノブに手をかけたところで、克己さんに呼び止められた。
「チョコちゃん」
「あっ、はい?」
克己さんは心配そうな顔をして、私を見ている。
蓮都は支払いを済ませたあと、さっさと外に出てしまっていた。
「やり直さないよな?」
「えっ?」
「さっきの彼、チョコちゃんには合わない気がする」
私は克己さんの顔をまじまじと見つめてしまった。
お客さんの声が「マスター、注文」と店内から聞こえると、克己さんは「はい、ただいま」と返事をして私とパーテーションの横を抜けていく。
克己さんは歩みを止めて振り返ると真っ直ぐ私の目を見た。
克己さんに視線をぶつけられて、なぜか小さく私の胸がドキリとする。
「チョコちゃん、流されないで」
克己さんはそう言って背中を見せた。
私は克己さんの背中が少し怒っているような気がした。克己さんに苛立ちみたいなものを感じて、私のなかでチクンとした胸の痛みが走った。
なん、だろう。
私と克己さんや貴教さんは、マスターとお客さんの一人の関係。
友達みたいになってきたから?
でも、曖昧だ。
友達と呼べるほど親しくはないと思う。
ただ、私は克己さんにまた心配をかけてしまっているんだ。
私はなんだか申し訳ない気持ちになっていた。