【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】

第45話 デート!? のお誘い

 私たちは揃って克己さんイチオシの喫茶『MOON』の新作夏野菜カレーを頼んでいた。

 私たちが他愛もないお喋りをしていると、ほどなくして克己さんがカレーライスを運んできてくれた。

「このカレーは以前、チョコちゃんが試作品を食べてくれてね。チョコちゃんの意見をだいぶ取り入れさせていただいたんです」
「いえ、そんな。私の意見なんて」
「千代子はすぐそうやって謙遜するんだから」
「チョコちゃんの意見があったから、賑やかで美味いカレーに仕上がったんだよ。さぁ、皆さんどうぞ」
「へぇ、チョコちゃんが。そりゃあ楽しみだな。いただきます」
「「「いただきます」」」

 なすとトマトと、グリルでいったん焼いた大きめのチキン、アスパラにオクラとパプリカが入った夏向きのスパイシーなルウのカレーライスは華やかで食欲をそそる。

 テーブルから去り際の克己さんと私はちらっと視線が合うと、どうして良いか分からなくなって、俯《うつむ》いてしまう。
 慌ててカレーライスだけを見た。

 楽しい会話が思いのほか弾んで、カレーライスを食べ終わると瑠衣が席を立ち上がって「私たち先に帰るね」と私に耳打ちした。
「じゃあ、私も……」と私が言いかけると「何言ってんのよ。マルさんと話すチャンスでしょ?」と瑠衣は長谷地くんの手を引っ張り、さっさと会計をしてお店を出てしまった。

 ど、どど、どうしよう?
 マルさんと二人っきりなんて。

 私はマルさんに緊張してあまり話せなくて。そんな私の緊張を解いてくれようと気遣ってくれているのか、マルさんは優しい笑顔で微笑んでいる。
 ゆっくりとした声の調子で、本屋さんの仕事の話や東雲菓子店のトキさん源太さん夫婦の話を聞かせてくれた。

「そうだチョコちゃん。良かったら、明日僕と出掛けませんか?」
「えっ?」

 嘘でしょ?
 私は夢のようなお誘いにびっくりして、息をするのも忘れてた。たぶん数十秒……。
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