【私は今日も癒やしの『喫茶MOON』に通う】
第7話 マルさんと……
昨日は私はマルさんの忘れ物らしきボールペンを持って、トキさんと瑠衣にことわりを入れてから、マルさんを追いかけて行った。
◇◇◆◇◇
「あの〜、すいませんっ! すいませ〜ん」
マルさんは足が早くて。
すでに豆粒みたいなマルさんのシルエットを、私はもう必死で走って追いかけた。
はあはあ息が上がりながらも、何度か叫んでマルさんを呼び止めた。
「はい? 僕ですか?」
振り返るマルさんの瞳が綺麗だなと思った。
優しげで大きな黒目で私をマルさんが見る。
「あなた確かMOONにいた方?」
「はいっ! 私、藤本千代子です。和菓子屋さんのトキさん達からはチョコちゃんって呼ばれてます」
はっ。しまった。
余計なことを言った。
だってただ忘れ物のボールペンを届けに来ただけなのに、聞かれてもないことをべらべらと。
「フフッ」とマルさんは笑ってから、
「僕は中丸政宗なかまるまさむねと言います。ごめんなさい。これから仕事なんです。今度ゆっくりとMOONでお話をどうですか? 今日は夕方からのシフトで出勤なんですよ」
夕方から仕事って、なんの仕事をしているんだろう?
わあっ。話したくて追いかけて来たかと誤解されたかも。恥ずかしい。
違うんです。
「あっ、あの。これっ!」
茶色いボールペンを差し出すと、マルさんは王子様のように(私には見えてます)微笑んだ。
「ありがとうございます。ぼくのボールペンです。わざわざ持って追い掛けて来てくれて……。ああっ、…そうだ。……これ、良かったら。お礼です」
マルさんは鞄から四つ葉のクローバーが貼られた手作りの栞しおりを出して私にくれた。
「職場のイベントで僕が作ったんですけど……。こんなのしかなくてすいません」
「いえっ! ぜんぜんっ! すごく嬉しいです。……ありがとうございますっ。大切に使います」
私はマルさんから栞をもらって、有頂天になった。
「じゃあ、また」
「はい。お仕事頑張って下さい」
私はマルさんに小さく手を振ると、マルさんはまたにっこり笑って会釈をして、駅の方に向かって行った。
初めて!
初めて、マルさんとお話が出来たよっ!
しかも彼の手作りの四つ葉のクローバーの栞しおりをもらっちゃった。
私はいつまでもマルさんの後ろ姿を見つめていた。
「へえ〜。チョコちゃん、初めてマルさんと会話したのかな?」
「えっ!」
誰?
私は背後から話し掛けられて、振り向くと喫茶「MOON」の双子のマスターの弟の方、南雲克己なぐもかつみさんが立っていた。
◇◇◆◇◇
「あの〜、すいませんっ! すいませ〜ん」
マルさんは足が早くて。
すでに豆粒みたいなマルさんのシルエットを、私はもう必死で走って追いかけた。
はあはあ息が上がりながらも、何度か叫んでマルさんを呼び止めた。
「はい? 僕ですか?」
振り返るマルさんの瞳が綺麗だなと思った。
優しげで大きな黒目で私をマルさんが見る。
「あなた確かMOONにいた方?」
「はいっ! 私、藤本千代子です。和菓子屋さんのトキさん達からはチョコちゃんって呼ばれてます」
はっ。しまった。
余計なことを言った。
だってただ忘れ物のボールペンを届けに来ただけなのに、聞かれてもないことをべらべらと。
「フフッ」とマルさんは笑ってから、
「僕は中丸政宗なかまるまさむねと言います。ごめんなさい。これから仕事なんです。今度ゆっくりとMOONでお話をどうですか? 今日は夕方からのシフトで出勤なんですよ」
夕方から仕事って、なんの仕事をしているんだろう?
わあっ。話したくて追いかけて来たかと誤解されたかも。恥ずかしい。
違うんです。
「あっ、あの。これっ!」
茶色いボールペンを差し出すと、マルさんは王子様のように(私には見えてます)微笑んだ。
「ありがとうございます。ぼくのボールペンです。わざわざ持って追い掛けて来てくれて……。ああっ、…そうだ。……これ、良かったら。お礼です」
マルさんは鞄から四つ葉のクローバーが貼られた手作りの栞しおりを出して私にくれた。
「職場のイベントで僕が作ったんですけど……。こんなのしかなくてすいません」
「いえっ! ぜんぜんっ! すごく嬉しいです。……ありがとうございますっ。大切に使います」
私はマルさんから栞をもらって、有頂天になった。
「じゃあ、また」
「はい。お仕事頑張って下さい」
私はマルさんに小さく手を振ると、マルさんはまたにっこり笑って会釈をして、駅の方に向かって行った。
初めて!
初めて、マルさんとお話が出来たよっ!
しかも彼の手作りの四つ葉のクローバーの栞しおりをもらっちゃった。
私はいつまでもマルさんの後ろ姿を見つめていた。
「へえ〜。チョコちゃん、初めてマルさんと会話したのかな?」
「えっ!」
誰?
私は背後から話し掛けられて、振り向くと喫茶「MOON」の双子のマスターの弟の方、南雲克己なぐもかつみさんが立っていた。