ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
 はあ、と私は大きく息を吐いた。

「これ以上ルシウス様を嫌いになりたくないのです。お引き取りを」
「出来ません。俺を『嫌い』だと言うのなら、好いてもらえるまで努力するのみです。また来ます」
「来なくて良いです!」

 そうまでして私を支えたいのか。それが仕事ですものね。そう思うと虚しい。
 ルシウス様は敬礼して私の元を去っていく。
 毎日毎日数時間おきに繰り返すこのやり取りが、業務のようで悲しくなる。こんなもの私はいらない。偽物の愛なんて必要ない。
 私は自分の公務に集中するべく、急いで執務室へと向かった。

 王宮主催のお茶会が三日後に迫っている。
 発注した茶葉、花、クロスなどは明日王都へと到着する予定だ。明日は一日確認作業をして、セッティングの手配をして……。
 考えながらリストを眺める私に、執務室長が外から走って来ると、声を上ずらせて言った。

「恐れ入ります、姫。今、治安部隊から連絡が入り、資材を積んだ商船が、北東の海域で行方不明になっているとの事です!」
「え。な、え?」
「昨日の定期連絡を最後に交信が途絶え、つながりません。沈没の可能性もあるかと」

 商船はミルガルム帝国で手配したものだ。

「乗組員の安否はわからないのですか?」
「調査を進めていますが、生存は絶望的との事でした」

 生存は、絶望的。その言葉に手が震える。
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