ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
 振り向いた先に居たのはルシウス様だ。

「ルシウス様、なぜ」
「トラブルがあったと聞いて来ました。大丈夫です、俺がついています」

 ルシウス様が私の身体を抱き寄せる。温かい。ふわりと香る甘い匂いに安心する。

「ティアナ姫、まずは近郊で手配可能な品物をリストアップしましょう。それからプログラムを組みなおします。良いですね?」
「え、ええ」

 私の心はルシウス様の助言で不思議と落ち着いてきた。脳内が整理されていく。
 そんな私をルシウス様が温かな眼差しで見つめた。いつもの、綺麗で優しい笑顔。胸がきゅっと締め付けられて痛い。

「執務室へ戻りましょう、姫」

 ルシウス様が私の腰に手を回し、私を支えながら執務室へ足を向けた。
 その時。

「待ちな」

 お姉さまの鋭い声が廊下に響く。
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