ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
「愛しています、ティアナ姫」

 そう言ったルシウス様の鼻先が、唇が、私の顔に触れる。
 そう思った時。

「ルシウス・マーシャル! 何をしているんだい!」

 気高く力強い女性の声が響き、私は我に返った。
 いけない、ルシウス様から離れなければ――けれどルシウス様の腕はがっちりと私の腰を包んでいて、のけぞることも出来ない。
 目の前1センチまで接近していたルシウス様は、声の方へゆったりと顔を向けた。

「ミルガルムの太陽、ドローレス女王陛下にお目にかかります。このすがすがしい晴天、庭園の散歩には最適な陽気ですね」

 私を腕に抱きながら、ルシウス様はお姉さま――ドローレス・ミルガルム女王陛下に向かい、姿勢を正した。
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