ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
 ルシウス様は凄かった。
 普段は執務にたずさわらず遊び歩いているだけのルシウス様が、次々に商店を巡り、最高級の茶葉、花、その他諸々を予算内で手配していく。

「張り切っていますなあ、マーシャル公爵のご子息は」

 執務室に次々入る「手配済み」の連絡を受け、その場にいた貴族たちが言った。それもそのはず。ルシウス様は十数人の貴族が数週間かけておこなった業務を一人で、たった数時間でこなしているのだ。

「ぜひ執務室に欲しい人材だ」

 貴族の一人が言って、マーシャル公爵はハハッと苦笑いした。

「いやはや、息子には姫をお守りする役目がありますから」
「役目ですか」
「ええ、勝手な役目ですがね。あれが自ら望んだ事なのです。『姫をお守りしたい』『そのために生きていきたい』と」

 マーシャル公爵の言葉が耳に届いて、私は思わず公爵に声をかけた。

「そうなのですか? ルシウス様が? 自ら?」
「ええ、そうです。あれは姫の誕生お披露目パーティーでしたでしょうか。一目見た姫に心を奪われ、息子は自ら『姫の騎士になる』と誓いを立てたのです」

 それは思いもよらない事だった。
 ルシウス様は私のために生きると、幼い時分に自ら誓ったと言うのである。公爵に指示されたわけではない。家柄ゆえに義務的に誓ったわけでもない。ただ純粋に、私を守りたいと誓った。
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