ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
 背筋を伸ばすと180センチは超える長身のルシウス様。見上げた長いまつげと鼻筋の通った横顔が、彫刻のように美しい。その凛々しい顔つきは、女王を前にしてもひるまなかった。さらさらしたブロンドの髪が風に揺れ、その残り香が妙に私の心をくすぐっていく。

「ほう。貴様の言う『散歩』とは、我が愛する妹をたぶらかす不埒なものなのかね」

 一方ルシウス様と対峙したお姉さまは、160センチに満たないながら、女帝として威厳のある堂々としたたたずまいで私たちの元へと歩み寄ってきた。彫りの深いお姉さまの顔は、黙って視線を向けるだけでも相当な威圧感がある。
 お姉さまは私たちの前で立ち止まり、長い黒髪をかきあげると、ルシウス様を見下すようにフンッと鼻を鳴らした。

「貴様ごときが妹に触れて良いと思うなよ。その汚い手を離せ、ルシウス・マーシャル」

 お姉さまはルシウス様から私を引きはがすように、私の肩を抱いて自分の方へ引き寄せた。そして――。

「あぁん、可愛い可愛いティアナ! もう! 大好き! キスしたい!」
「お、お姉さま! やめてください!」
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