ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
「ひどい……」

 吐き出した言葉と共に涙があふれた。信じられない。全部嘘だったなんて、信じたくもない。
 あの優しいまなざし。さらさらと流れるブロンドの髪。甘い香り。私に触れる温かな手。私に与えられたルシウス様のすべてが、私を、帝国を騙すための、嘘?
 いつ寝返ったというの?

 よろめきながら自室にたどり着き、ベッドに倒れ込む。

 ルシウス様に抱き上げられて、ルシウス様の膝枕で眠りに落ちたあの温かな思い出は、あれはなんだったのだろう。私を愛していると言ったじゃないか。私のためになんでもすると言ったじゃないか。
 私に語った愛は、嘘?

 涙が止まらない。

 自分の中でルシウス様の存在がこんなにも大きくなっていることにも驚いた。
 私だってルシウス様がいなければ生きていけないのに、こんな形で裏切るなんて、ひどい。
 ルシウス様――。

 ベッドに突っ伏した私はそのまま深い眠りについた。
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