ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
「ルシウス様は投獄されてもなお、すべてを『私のため』と言うのですね。自信を持って誓えるのですか? スパイではないと。すべて、私のためであると」
「当然です」
ルシウス様の赤い瞳は、いつもと変わらず私を射抜く。
「ティアナ姫がこのミルガルム帝国で幸せに暮らせるよう、俺は誠心誠意動いてきました。確かにコソコソ動いていましたが、それも理由があっての事です。決してスパイではありません」
「理由?」
問いかけると、ルシウス様は困ったようにうつむいてしまった。言いたくない、と態度で言っている。そんなにひどい理由があるのか。
「ルシウス様。説明せずに信じろとは横柄ですわ。理由を教えて頂けなければ信じられません」
私は肩の力を抜いて「呆れた」とジェスチャーして見せた。ルシウス様は困ったように顔を歪ませている。
しばらくするとルシウス様は観念して、ボソボソと理由を述べ始めた。
「姫に『仕事だから』と、思われたくなかったのです」
「……はい?」
私にはルシウス様の呟きが理解できず、首をかしげた。ルシウス様が大きく首を横に振る。
「俺は自分の意志でティアナ姫のために動いているのです。公務だと思われるのが嫌だった。俺のティアナ姫への愛を、仕事に置き換えられるのが心底嫌だった!」
ルシウス様の言葉に力が入る。
「だから城の人間には誰にも知られたくなかったのです。知られたら給与が発生し、仕事にされてしまう。絶対に嫌だ! 俺は『職務だから外交をおこない、職務だから姫のためにこの命を捧げ、職務だから姫を支えている』と姫に誤解される事が、心底恐ろしかったのです!」
「当然です」
ルシウス様の赤い瞳は、いつもと変わらず私を射抜く。
「ティアナ姫がこのミルガルム帝国で幸せに暮らせるよう、俺は誠心誠意動いてきました。確かにコソコソ動いていましたが、それも理由があっての事です。決してスパイではありません」
「理由?」
問いかけると、ルシウス様は困ったようにうつむいてしまった。言いたくない、と態度で言っている。そんなにひどい理由があるのか。
「ルシウス様。説明せずに信じろとは横柄ですわ。理由を教えて頂けなければ信じられません」
私は肩の力を抜いて「呆れた」とジェスチャーして見せた。ルシウス様は困ったように顔を歪ませている。
しばらくするとルシウス様は観念して、ボソボソと理由を述べ始めた。
「姫に『仕事だから』と、思われたくなかったのです」
「……はい?」
私にはルシウス様の呟きが理解できず、首をかしげた。ルシウス様が大きく首を横に振る。
「俺は自分の意志でティアナ姫のために動いているのです。公務だと思われるのが嫌だった。俺のティアナ姫への愛を、仕事に置き換えられるのが心底嫌だった!」
ルシウス様の言葉に力が入る。
「だから城の人間には誰にも知られたくなかったのです。知られたら給与が発生し、仕事にされてしまう。絶対に嫌だ! 俺は『職務だから外交をおこない、職務だから姫のためにこの命を捧げ、職務だから姫を支えている』と姫に誤解される事が、心底恐ろしかったのです!」