ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
「……はい?」

 私は思わず聞き返してしまった。職務であることが、恐ろしい? そう思われることが、嫌?
 色白なルシウス様の頬に赤みが差していく。恥ずかしそうに片手で顔を覆った。

「ティアナ姫。俺はこの命、貴女様のために捧げています。これまでも、これからも。それを証明し続けたかったのです。仕事として貴女に仕えているわけではない。それを証明したかった! ……それが、俺がコソコソと外交を続けていた理由です。これで良いですか、満足しましたか」

 そう打ち明けたルシウス様は私から顔をそらした。ブロンドの髪のかかった耳が真っ赤に染まっている。
 照れている。
 明らかに。
 これを本心と言わずして、何を本心と言うのだろう。

「では、ルシウス様はそんな事のためにコソコソと外交を続け、挙句スパイとして投獄された、そういう事ですか?」
「『そんな事』だなんて言わないでください。俺の美学です」

 ルシウス様は合わせる顔がないとでも言いたそうに目をそらし続けている。そんな姿が愛らしくて、私は思わず笑ってしまった。
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