ルシウス様、お姉さまに張り合わないでください!
「いや、姫! こんな話をしている場合ではありません! 南国の王にご挨拶と観光を。今なら間に合います。会談を成功させなくては!」
「あ、そうでしたわね! ではお姉さまに連絡をとって……いえ、違いますわ。ルシウス様、私は貴方に外交を頼みたいのです。協力していただけませんか」

 話を聞いて私は確信した。外交を頼める相手は、やっぱりルシウス様しかいない。
 けれどルシウス様は自信がなさそうに目を伏せる。

「いや、しかし俺は」
「私は貴方しかいないと思います。行きますわよ!」
「行くって」

 私は地下牢の出入り口へ駆けて行き、近衛兵にルシウス様の牢を開けるよう懇願した。が、当然聞き入れてくれるわけがない。それは承知の上だ。
 ルシウス様がずっと私のために努力してくださっていたのなら、私もルシウス様のために努力したい。それが私の使命だ。

 私は近衛兵たちの目の前で、いつぞやのお姉さまのようにドレスの裾をたくし上げた。太ももに巻き付けていたホルダーから短剣を一本抜き取り、自分の首に切っ先を向ける。
 私だって、やるときはやるのです!
 私を止めようとした近衛兵たちが一瞬でフリーズし、私の動向を見守っている。私はニヤリと笑った。
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