水曜日の黒猫
水曜日の魔法使い
 今もまだ信じられないでいる。

 
 夢現、わたしは宵闇の人の後ろを歩く。キャンディショップの店内の奥に通された先は住まいになっていて、物はあまり置いてない。

 必要最低限の家電があるだけだ。


「物が少ない方が生活しやすいからな。恋人と一緒に暮らすなら、好きな環境に変えてもいい」

「いいの?」

「好きじゃないなら、好きになればいい。それができないなら真実じゃない」


 レモネードの香りがどの部屋からもする。それは心地よい柑橘と蜂蜜が調和した、わたしの好きな香り。きっぱりとした物言いからは誠実さを感じる。



 「ここだ」


 連れてこられた先は、書斎だった。その部屋の棚にもキャンディの瓶がある。

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