水曜日の黒猫
「キャンディのお兄ちゃん」

「なんだ」

「お兄ちゃん見てたら思い浮かんだ物語があるの。“水曜日の夜”にだけキャンディのお店はやってて、レモネードキャンディがいっぱいあるんだよ」

「へえ。それで?」

「そのお店をやってるのは、キャンディのお兄ちゃん! “水曜日の魔法使い”ってみんなから呼ばれてるんだよ。お兄ちゃん黒猫さんに似てるから……」



「「水曜日の黒猫」」



 二人の声が美しく重なる。


 「じゃあ約束だ。俺と月“るな”の。もしまた出会えたら――その時伝えたいことがあるから聞いてくれるか? それからキャンディのお兄ちゃんじゃなくて“水(すい)”な、水曜日の」


  わたしが小さい頃考えた物語。はじめて話した夢を聞いてくれた、大切な人。


  書斎の淡くとけこんだ蜂蜜色の机に置かれた宝物に目を細める。これはまだ序章に過ぎない、水曜日の呪いはまだ解けたばかりだ。


  “水曜日の黒猫”とタイトルが書かれた絵本の作者名には、わたしと水の名前が輝いている。

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