水曜日の黒猫
 宵闇のその人は、店内を星空のように彩っている。天井の照明器具も星を模していて、ひとつひとつちがう形をしている。


――わたしとお兄ちゃんが出会ったのは“夜”。


 あの日。夜空は、金平糖のような星の海が果てしなく広がっていた。


 ――心細かったけど。でも隣には、お兄ちゃんがいてくれたから。手を繋いで、たくさんの物語を聞かせてくれた。

 

 “言葉の魔法使い”。お兄ちゃんはお話がとても上手で、わくわくさせてくれる。いつもキャンディを持ち歩いてて、猫がいつも集まってくるんだって言ってた、ような。


 ――お兄ちゃん……は、別れ際なんて言ってたんだろう。


 とても大切な約束、だったような。


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