【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
 母が死んでから、私は孤児院に引き取られた。引き取られた当初は、こんなに人道的で落ち着いている孤児院で生活できるなんてとても運がよかったのだと思っていた。
 だけど、そうじゃなかった。母が生前からそうなるように頼んでいたのだ。そして貧しいながらも寄付をしていたこと、母がボランティアに出向いていたこと、他にもいろんな人の助けがあって、私はその孤児院に入れたんだと知った。

 孤児院に入って、初めて読み書きができることが当たり前ではないのだと知った。
 母が私に当たり前に教えてくれていたそれは、誰もができることではなくて、とても貴重な武器だった。
 母のことを思い出すことが多々あったけれど、それでも孤児院の暮らしに馴染めたのは、先生のおかげだった。
 先生は私にとって、第二の母だった。
 孤児院では、それぞれが仕事を持ってたくさん労働したし、小さな子の面倒も見た。
 勉強教えたり、教えられたり、生きていく知恵を身に付けた。
 そんな日々の中で、先生から母のことを聞くのが好きだった。先生は、母のことをたくさん褒めてくれた。それがとても誇らしかった。

『シア、いいの。これでいいの』

 辛くなったら、いつもその母の言葉を思い出して、母を真似て歌を歌ったけれど、私の歌はあまり上手じゃなくて、母のようにはなれなかった。

 私に魔力があると気づいたのは、先生だった。
 私に割り当てられた仕事の中の一つが看護補助だった。教会に訪れるけが人や病人の手当てをする中で、私に手当てをされた人は、通常よりもだいぶ治りが早い、と先生は気づいたのだった。
 魔力は、その血筋により受け継がれることが多く、平民にも魔力持ちはいるがそれはほとんど稀なことで、せっかく魔力を持っていても知識のなさ故、自分が魔力を持っていることにすら気づかないことも多い。
 その中で、同じ治癒能力を持った先生に巡り会えたのは本当に幸運だったのだろう。
 私に回復魔法の素質があると気づいた先生は、それから治癒師(ヒーラー)になるための魔法の使い方を教えてくれた。
 治癒師(ヒーラー)になるには、国から認められた免許がいる。回復魔法を使いこなし、一定以上の基準をクリアしている必要がある。
 いずれ孤児院を出なければならないのなら、手に職があった方が良い。そんな先生の勧めで、私が魔力判定を受けることになったのは、私が13歳になったばかりの事だった。
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