【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
小さなダイニングテーブルに向かい合って座る。
アルに出されたちょっと遅めの朝食はガレットだった。
「地産地消したいっていってたし、ターゲット層は女性向けってことなら、こういうのどうかなって。うちで採れた卵と野菜を使って、ヤギのミルクとパンつけて、ヤギの乳で作ったチーズとバター添えて。似た内容でパスタメニューもいけると思うから、品数絞って回した方がロスも少なくていいかなって」
「……めっちゃオシャレ。そしてすごく美味しい。アル天才っ」
カフェ営業は思いつきだったのに、しっかり計画立ててくれるアルを褒めつつ、ガレットに舌鼓を打つ。
「あとは簡単なスイーツ日替わりで用意して、ジュースかコーヒーか紅茶選択してもらってもいいかな。食糧事情がかなり改善されて、貿易で色んな品物入ってくるようになったし」
「うわぁ、何それ! トキメキしかないっ」
アルの作るごはんとスイーツ。絶対美味しいに決まっている。むしろ私が通いたいととてもリアルに想像できたところで我に返り、抗議の声をあげようと口を開く。
が、声を発するより早く口の中に何かが放り込まれ、私は目を白黒させながら夢中で咀嚼する。
「……美味しい」
「よかった。とりあえずパンケーキも試作したんだぁ。ヨーグルト入りでふわふわのもちもちを目指してみました。もちろん、生クリームも自家産だよ」
フォークを持ったまま、にこにこにこと微笑むアルに勝てる気がしない。
なぜなら私はこの半年で、アルにガッツリ胃袋を掴まれているからだ。
「男の人は飲み屋があって息抜きできるけど、女の子も気軽に息抜きできる場所があればいいなぁーって、思ってカフェ作りたかったんでしょ?」
「……勝手にヒトの思考読まないでくれる? 魔族はヒトの心でも読めるの?」
「まさか。でも、シアが考えていることは分かるよ。シアはいつも誰かのために一緒懸命頑張るから」
「……買い被りすぎだわ」
誰かのために、ずっと一生懸命尽くすなんて母みたいな生き方、私にはできない。現に、追放されたのをいい事にずっと現実から目を逸らしている。
アルは目を伏せて、フォークを置いた私の頭を優しく撫でる。触れた手が温かくて、そしてとても大きい事に驚く。
「カフェでも何でも、シアが好きな事をしたらいい。俺なら絶対どんな事でも黒字にできるよ。ほら、俺は有能な上に顔がいいから」
アルは少し茶化すような口調で笑ってそう言った。
「そんなわけで、経営者さん、俺のことを継続雇用しませんか?」
楽しそうな口調とは裏腹に、アルの紅茶色の瞳は懇願するような色を帯びていて、私はすぐさま突っぱねることができなかった。
アルに出されたちょっと遅めの朝食はガレットだった。
「地産地消したいっていってたし、ターゲット層は女性向けってことなら、こういうのどうかなって。うちで採れた卵と野菜を使って、ヤギのミルクとパンつけて、ヤギの乳で作ったチーズとバター添えて。似た内容でパスタメニューもいけると思うから、品数絞って回した方がロスも少なくていいかなって」
「……めっちゃオシャレ。そしてすごく美味しい。アル天才っ」
カフェ営業は思いつきだったのに、しっかり計画立ててくれるアルを褒めつつ、ガレットに舌鼓を打つ。
「あとは簡単なスイーツ日替わりで用意して、ジュースかコーヒーか紅茶選択してもらってもいいかな。食糧事情がかなり改善されて、貿易で色んな品物入ってくるようになったし」
「うわぁ、何それ! トキメキしかないっ」
アルの作るごはんとスイーツ。絶対美味しいに決まっている。むしろ私が通いたいととてもリアルに想像できたところで我に返り、抗議の声をあげようと口を開く。
が、声を発するより早く口の中に何かが放り込まれ、私は目を白黒させながら夢中で咀嚼する。
「……美味しい」
「よかった。とりあえずパンケーキも試作したんだぁ。ヨーグルト入りでふわふわのもちもちを目指してみました。もちろん、生クリームも自家産だよ」
フォークを持ったまま、にこにこにこと微笑むアルに勝てる気がしない。
なぜなら私はこの半年で、アルにガッツリ胃袋を掴まれているからだ。
「男の人は飲み屋があって息抜きできるけど、女の子も気軽に息抜きできる場所があればいいなぁーって、思ってカフェ作りたかったんでしょ?」
「……勝手にヒトの思考読まないでくれる? 魔族はヒトの心でも読めるの?」
「まさか。でも、シアが考えていることは分かるよ。シアはいつも誰かのために一緒懸命頑張るから」
「……買い被りすぎだわ」
誰かのために、ずっと一生懸命尽くすなんて母みたいな生き方、私にはできない。現に、追放されたのをいい事にずっと現実から目を逸らしている。
アルは目を伏せて、フォークを置いた私の頭を優しく撫でる。触れた手が温かくて、そしてとても大きい事に驚く。
「カフェでも何でも、シアが好きな事をしたらいい。俺なら絶対どんな事でも黒字にできるよ。ほら、俺は有能な上に顔がいいから」
アルは少し茶化すような口調で笑ってそう言った。
「そんなわけで、経営者さん、俺のことを継続雇用しませんか?」
楽しそうな口調とは裏腹に、アルの紅茶色の瞳は懇願するような色を帯びていて、私はすぐさま突っぱねることができなかった。