【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「じゃあ尋ねるが、人間は何者からも、何も奪わないのか?」
アルから射抜かれるように向けられた視線には怒りが感じられ、ノエルはたじろぐ。
「シアをボロボロになるまで傷つけて、聖女の能力を酷使させて、シアから聖女の力を略奪し続けたのはお前達人間だろう」
ノエルはそう言われて言葉を飲む。魔王討伐後のシアは逃げ出したくなるほど聖女として酷使され、精神が擦り切れるほど心に傷を負った。
魔王討伐後も首都になど留まらせず、連れ出していれば、それが敵わなくてもせめてもう少し気にかけてやれていたら、馬車馬のように働かされたシアが濡れ衣を着せられ、追放されるようなこともなかっただろう。
「だけど、俺は個人的にはシアにはヒトの世界で幸せに生きて欲しいと思っている」
ふっと、アルから怒気が消え、そして寂しそうな目をしてそう言った。
「彼女が笑って暮らせるようになったら、ちゃんと手を離して離れるから、俺が居なくなった後は君がシアを守ってやって」
押し黙ったノエルに、願うように言葉を紡いだアルは、静かに微笑む。
「……何故、それを俺に言う?」
「君はシアを心配しているようだし、シアは君に懐いているように見えたから」
アルは自身の手に視線を落とす。真っ黒に染まった爪は明らかに人のそれとは異なる。
『取引しましょう。次に生まれる、希望をあげるわ』
それは先代聖女との約束だった。彼女はとても変わり者で、笑った顔がシアに似ていた。
『だから、そんな顔をしないで、生きてみなさいよ。あなたの聖女に会えるまで』
シアを見ているとどうしても彼女を思い出す。彼女とシアは違うと分かっているのに。
「きっと、人は人と暮らす方がいい」
時間軸の違う種族が一緒にいるには相当の覚悟がいる。それをアルは知っている。
「聖女は、その力を持っているが故に人間にも魔族にも狙われるから。だから、勇者様が守ってやって」
その役目はきっと、人間では無い自分には担えない。
「シアの大切なものと争いたくないんだ。だからそれまで、見逃して」
懇願するようにそうつぶやくその姿に、以前討伐した魔王のような禍々しさは感じられなかった。
「信じたわけじゃないから」
アルの言い分を完全に信じたわけではない。それでもここひと月この2人や町の様子を見て、今すぐ排除しなければならない存在には見えなかったから。
「何かあれば、すぐにその首落としてやる」
「まぁ、そう簡単にはこの首やれんのだけど、チャレンジする分は止めないよ。正当防衛ならシアも許してくれるだろうし」
剣を納めてそう言ったノエルに、それで充分だよとアルは礼を言った。
「変な魔王だな」
「まぁ、今は玉座を追われた身だから魔王じゃないけど。君はまだ魔族を語れるほど俺たちの事を知らないだろ?」
だから調べに行くんだろ? とアルは笑う。
「ああ、そうだ。冷凍庫付き冷蔵庫早めによろしく。アイスクリーム作りたいし」
「…………何気にアンタが一番スローライフ楽しんでないか?」
「いやぁ、責任のない立場って気楽でいいよね」
そんな気の抜けた返事をする元魔王にため息をついて、了承を告げたノエルは背を向けて歩き出した。
アルから射抜かれるように向けられた視線には怒りが感じられ、ノエルはたじろぐ。
「シアをボロボロになるまで傷つけて、聖女の能力を酷使させて、シアから聖女の力を略奪し続けたのはお前達人間だろう」
ノエルはそう言われて言葉を飲む。魔王討伐後のシアは逃げ出したくなるほど聖女として酷使され、精神が擦り切れるほど心に傷を負った。
魔王討伐後も首都になど留まらせず、連れ出していれば、それが敵わなくてもせめてもう少し気にかけてやれていたら、馬車馬のように働かされたシアが濡れ衣を着せられ、追放されるようなこともなかっただろう。
「だけど、俺は個人的にはシアにはヒトの世界で幸せに生きて欲しいと思っている」
ふっと、アルから怒気が消え、そして寂しそうな目をしてそう言った。
「彼女が笑って暮らせるようになったら、ちゃんと手を離して離れるから、俺が居なくなった後は君がシアを守ってやって」
押し黙ったノエルに、願うように言葉を紡いだアルは、静かに微笑む。
「……何故、それを俺に言う?」
「君はシアを心配しているようだし、シアは君に懐いているように見えたから」
アルは自身の手に視線を落とす。真っ黒に染まった爪は明らかに人のそれとは異なる。
『取引しましょう。次に生まれる、希望をあげるわ』
それは先代聖女との約束だった。彼女はとても変わり者で、笑った顔がシアに似ていた。
『だから、そんな顔をしないで、生きてみなさいよ。あなたの聖女に会えるまで』
シアを見ているとどうしても彼女を思い出す。彼女とシアは違うと分かっているのに。
「きっと、人は人と暮らす方がいい」
時間軸の違う種族が一緒にいるには相当の覚悟がいる。それをアルは知っている。
「聖女は、その力を持っているが故に人間にも魔族にも狙われるから。だから、勇者様が守ってやって」
その役目はきっと、人間では無い自分には担えない。
「シアの大切なものと争いたくないんだ。だからそれまで、見逃して」
懇願するようにそうつぶやくその姿に、以前討伐した魔王のような禍々しさは感じられなかった。
「信じたわけじゃないから」
アルの言い分を完全に信じたわけではない。それでもここひと月この2人や町の様子を見て、今すぐ排除しなければならない存在には見えなかったから。
「何かあれば、すぐにその首落としてやる」
「まぁ、そう簡単にはこの首やれんのだけど、チャレンジする分は止めないよ。正当防衛ならシアも許してくれるだろうし」
剣を納めてそう言ったノエルに、それで充分だよとアルは礼を言った。
「変な魔王だな」
「まぁ、今は玉座を追われた身だから魔王じゃないけど。君はまだ魔族を語れるほど俺たちの事を知らないだろ?」
だから調べに行くんだろ? とアルは笑う。
「ああ、そうだ。冷凍庫付き冷蔵庫早めによろしく。アイスクリーム作りたいし」
「…………何気にアンタが一番スローライフ楽しんでないか?」
「いやぁ、責任のない立場って気楽でいいよね」
そんな気の抜けた返事をする元魔王にため息をついて、了承を告げたノエルは背を向けて歩き出した。