【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
「アル、ステイ」
そんな私と椅子を交互に見たアルはとても嬉しそうに笑って大人しくそこに座った。
「ふふふっ、モテる嫁を持つと聖女様は気が気じゃなくて大変ですね」
「だねぇ、シアが店にいてくれるだけで平和だったっていなくなってから気づいたよ」
いそいそとお昼ごはんの準備を始めた2人を見ながら私は不満げにアルを見る。
「……確かに、守ってあげるとは言ったわ。でも、私のこと風よけに使わなくてもいいでしょ!?」
人の気も知らないでっとその言葉は口にせず私は不満を口で転がす。
「まぁでもそれがみんな一番納得してくれる平和的解決策だから」
それに、嘘じゃないしねとアルは紅茶色の瞳を細めて笑いながら、拗ねた子どもをあやすみたいに私の頭を撫でた。
「……子どもじゃないんだけど」
アルの手を退けながらいちいち突っかかる私は、なんて子どもっぽいんだろう。自分で自分が嫌になる。
「俺の聖女様は、今日はご機嫌斜めみたいだね」
アルは苦笑気味に笑って手袋をはめた手で私の前に静かにコーヒーを置いた。
大人になったアルはそれはそれは人目を引くほど容姿端麗だった。それこそシェイナが言うように老若男女問わず声がかかるほどに。
ノエルがいなくなり冒険者たちがたむろしなくなったカフェは当初の予定通り女性客メインのカフェになった。だけど、アルの客寄せ効果が強過ぎた。
その上私が釣り大会の運営準備に出かける日が増えたら、アル目当ての子が露骨に増え、アルを巡って喧嘩が勃発している事もあった。
怪我は治してあげたけど、これからどうしたらいいんだろうとオロオロしていた私をよそに、アルが取った手段は私を口実に断ると言うものだった。
しかも動揺する私を無視して人前で甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ、時には平然と髪を撫で、肩を抱く。
あまりに頻度が高いので流石に動揺はしなくなったけど、その度に思い知らされる。
私は想いを寄せることすら許されないくらい、アルにとっては圏外なんだって。
きっと、アルを側におこうと決めた時にはもう、私が気づかないうちにそれは私の中に根付いていたのだろう。
私にとってこれが初めて誰かを想う『特別な感情』なのだと自覚させたのが、アルに告白する女の子達の顔と私はそれが許されないのだと分かるアルの態度だなんて、皮肉な話なんだけど。
アルが私に向ける視線は崇拝や信仰の類ではなく、ましてや恋慕の情でもないと、分かっている。だけど、アルからとても大切に扱われ、"俺の聖女"と言われるたびに心がざわつくのを止めることができなかった。
もうこれに関しては私だけの責任じゃないと思う。だって人生上女の子扱いなんてほぼされた事のない社畜っていうか公僕状態だった聖女の免疫の無さ舐めすぎでしょ!!
そんなわけで自分の感情の取り扱い方が分からない私は反抗期の娘みたいにそっけない上に可愛くない態度を取り続けているのだった。
「……様、セリシア様!! 聞いてます?」
「ああ、ごめん。聞いてなかった。サンドイッチなら好きなの食べていいよ。アルが作ってくれたやつならどれも美味しいから」
上の空だった私の適当な返事を聞いたシェイナはため息をついて、
「休憩がてら、息抜きしましょう。アル様、食事前ですけどちょっとセリシア様お借りしますね」
あっと思う間も無く私の手を引いてシェイナは2階の階段に向かって歩き出した。
そんな私と椅子を交互に見たアルはとても嬉しそうに笑って大人しくそこに座った。
「ふふふっ、モテる嫁を持つと聖女様は気が気じゃなくて大変ですね」
「だねぇ、シアが店にいてくれるだけで平和だったっていなくなってから気づいたよ」
いそいそとお昼ごはんの準備を始めた2人を見ながら私は不満げにアルを見る。
「……確かに、守ってあげるとは言ったわ。でも、私のこと風よけに使わなくてもいいでしょ!?」
人の気も知らないでっとその言葉は口にせず私は不満を口で転がす。
「まぁでもそれがみんな一番納得してくれる平和的解決策だから」
それに、嘘じゃないしねとアルは紅茶色の瞳を細めて笑いながら、拗ねた子どもをあやすみたいに私の頭を撫でた。
「……子どもじゃないんだけど」
アルの手を退けながらいちいち突っかかる私は、なんて子どもっぽいんだろう。自分で自分が嫌になる。
「俺の聖女様は、今日はご機嫌斜めみたいだね」
アルは苦笑気味に笑って手袋をはめた手で私の前に静かにコーヒーを置いた。
大人になったアルはそれはそれは人目を引くほど容姿端麗だった。それこそシェイナが言うように老若男女問わず声がかかるほどに。
ノエルがいなくなり冒険者たちがたむろしなくなったカフェは当初の予定通り女性客メインのカフェになった。だけど、アルの客寄せ効果が強過ぎた。
その上私が釣り大会の運営準備に出かける日が増えたら、アル目当ての子が露骨に増え、アルを巡って喧嘩が勃発している事もあった。
怪我は治してあげたけど、これからどうしたらいいんだろうとオロオロしていた私をよそに、アルが取った手段は私を口実に断ると言うものだった。
しかも動揺する私を無視して人前で甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ、時には平然と髪を撫で、肩を抱く。
あまりに頻度が高いので流石に動揺はしなくなったけど、その度に思い知らされる。
私は想いを寄せることすら許されないくらい、アルにとっては圏外なんだって。
きっと、アルを側におこうと決めた時にはもう、私が気づかないうちにそれは私の中に根付いていたのだろう。
私にとってこれが初めて誰かを想う『特別な感情』なのだと自覚させたのが、アルに告白する女の子達の顔と私はそれが許されないのだと分かるアルの態度だなんて、皮肉な話なんだけど。
アルが私に向ける視線は崇拝や信仰の類ではなく、ましてや恋慕の情でもないと、分かっている。だけど、アルからとても大切に扱われ、"俺の聖女"と言われるたびに心がざわつくのを止めることができなかった。
もうこれに関しては私だけの責任じゃないと思う。だって人生上女の子扱いなんてほぼされた事のない社畜っていうか公僕状態だった聖女の免疫の無さ舐めすぎでしょ!!
そんなわけで自分の感情の取り扱い方が分からない私は反抗期の娘みたいにそっけない上に可愛くない態度を取り続けているのだった。
「……様、セリシア様!! 聞いてます?」
「ああ、ごめん。聞いてなかった。サンドイッチなら好きなの食べていいよ。アルが作ってくれたやつならどれも美味しいから」
上の空だった私の適当な返事を聞いたシェイナはため息をついて、
「休憩がてら、息抜きしましょう。アル様、食事前ですけどちょっとセリシア様お借りしますね」
あっと思う間も無く私の手を引いてシェイナは2階の階段に向かって歩き出した。