【コミカライズ企画進行中】捨てられ聖女は働かないっ!〜追放されたので念願のスローライフはじめます〜
 私の前に跪いたS級男の額に銃口を突きつける。

「私、これでも元聖職者だから懺悔させてあげるわ」

「何を、偉そうに」

「アンタの罪は大きく3つ」

 肩で息をする男を前に、私は教会で人前に立たされたときのように笑顔を浮かべ淡々と言葉を紡ぐ。

「その1。貴重な回復職を傷物にしたこと。アンタさっき後衛職や回復要員をバカにしてたけど、アンタ達みたいなのがバカスカバカスカ魔力や体力削っても無事に帰って来れるのは、自分の身を守りながらフォローしてくれる存在のおかげだってこと、まずは理解なさい」

 回復職は自分で獲物を討伐するという大きな功績は確かに少ないかもしれない。だけど、けして安全圏内で大人しく守られているわけじゃない。他人を回復させながら、自分の残りの魔力を持たせなければならない回復要員は実はかなりハードだ。

「その2。勘違いで仲間を危険に晒そうとしたこと。勇者様に引っ付いて行った結果、ランクアップしただけの奴が粋がるな。実力以上の所にいくのは死にに行く様なものよ。自殺ならひとりで行きなさい」

 まぁ、これに関してはノエルにも責任があると思っている。あの人は一人でダンジョン最下層まで潜れるくらい強い。
 が、安全確保の規定上潜るには複数人数が必要なダンジョンがほとんどで、ノエルは相手の実力など構わず声をかけてきた人間誰でも連れていく。
 勇者についていくだけで参加者全体に経験値が配布されるため、結果大幅にランクアップを果たす人もおり、自身の実力を見誤る。

英雄願望症候群(勇者の代理成功体験)って私は呼んでるんだけど、勇者様と冒険するとまるで自分まで強くなったって錯覚しちゃうのよね。バカみたいに魔獣吹っ飛ぶし、サクサク攻略していっちゃうし」

 私はノエルの仲間だったから知っている。あの人の強さは本物で、圧倒的だ。

「勇者様は大抵自分一人で大丈夫だし、誰も死なせない自信があるから、誰とでも組むけど、アレは規格外だから。S級ランクにも段階があるの。ギルドの簡易測定じゃそれ以上出ないってだけでS級ランクってだけで自分と勇者を同一視したら一瞬で詰むわよ。現にS級ランクの回復職の私に手も足も出ないじゃない。自分の実力を測れないなら冒険者なんてやめてしまえ」

 ノエルと本気でパーティを組もうと思ったら努力し続けられる人間しか残れない。
 そして強制的に勇者パーティに入れられ、ノエルに鍛えられた私はS級に上がるまでに何度死にかけたかもはや覚えていない。

「その3。うちの子(アル)への暴言は一切許さない。平伏して詫びなさい」

 私は罪状を上げ終わると、男の足を床に縫い留めていた光の矢を消す。私の威圧感に当てられたS級男は支える腕もないためそのままどさっと床に崩れ落ちた。

「ねぇ、A級までは自力で上がったんでしょ? 今回はオイタが過ぎたようだけど、元聖職者らしく、悔い改める気があるのなら救済してあげてもいいわ」

 私は銃で男の顔を持ち上げて私の方を向かせる。

「悔い、改める……?」

 虚な視線を私に寄越した男に私は聖女よろしく微笑む。

「そう、誰にでも間違いはあるもの。潔く謝るならば許しましょう。さぁ、選んで?」

 私はいつもそうするみたいに、相手の目をじっと見つめ問う。
 聖女に赦しを乞うか、それともセリシアに裁かれるか。

「……申し訳、ありませんでした」

「ええ、助けてあげる。奉仕の精神を身につけるといいわ。ちょうどボランティアを探していたの」

 そう言った私は両腕を治した直後に銃で男を撃ち抜いた。ついでに床に転がしておいたこの男の仲間たちも。
直後、ギルド内に絶叫がこだました。
 私のこの特殊な回復魔法は、潜在的に溜まったダメージを強制的にデトックスする。その代わり、かなり痛みを伴う。お仕置きとしては打って付けだろう。

「最大出力で痛くしといたから、まぁデトックスが終わったらその性根も少しはマシになってると良いわね♪」

 まぁ、人格矯正ができるかは知らないけどれど。
 銃を消失させてパンパンと手を払うと、遠巻きに私を見ていたシェイナに笑いかけ、終結を知らせた。
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